Column

《コラム》新入社員研修のオンライン化

◆2021年入社の新人研修の実施方法は? 2020年は多くの企業がコロナの影響を受けましたが、事業だけではなく人材育成についても影響が出ています。ある民間調査によると、新入社員を迎えた企業の8割方は、オンライン対応が間に合わず集合研修を実施したようです。一方で、オンラインやe-ラーニングで実施した企業も増加はしていて、部分的にでもオンラインで実施した企業も少なくありません。 そして2021年4月入社者の研修については、集合型が根強く残るものの、オンラインとリアルを組み合わせて実施する企業も多いようです。 オンラインのメリットは、コロナ対応だけではありません。会場設営の手間やコストが減少し、複数拠点に対して研修の同時開催が可能なことなどもあげられます。また、今年度、多くの大学ではオンラインで講義が行われています。コロナ後についても、部分的にはオンラインが残ると言われており、今後はこの環境で育ってきたリモートネイティブが社会に出てくることになります。彼らにとっては、集合型の研修のほうが違和感のあるものになっていく可能性があり、企業側の対応力が問われます。 ◆研修オンライン化のためのポイント 研修のオンライン化を進めるにあたっては、オンラインに適している部分と適さない部分を明確にし、オンライン化する箇所については、ZOOMなどの機能を使うか、e-ラーニングや動画配信などを使うか、ツールの選択を行いましょう。 たとえば、意識の醸成や人間関係の構築には集合型が向くと考えられます。座学の講義についてはオンラインがよさそうですが、チャット機能や投票機能を使うことで、より双方向なコミュニケーションが可能となります。 また、オンラインの場合は、集合型の場合よりも、伝える内容をより明確にする必要があるとも言われています。これまでは身振り手振りも含めた空気感で伝えられたことも、言語化が求められます。集合型研修をオンラインに移すというだけではなく、そもそもの研修の目的、意義を再確認しながら、オンラインに適した研修の再構築をすることが、よりよい育成につながるでしょう。

《コラム》消費税納税義務と相続承継

◆相続による事業の承継と可否判定 相続による事業の承継には、非事業者であった相続人が相続により事業者になる場合のほか、相続人も被相続人も事業者の場合があります。 相続承継後翌年以後の課税・免税事業者の判定は、承継前の相続人と被相続人の事業の各基準期間の課税売上を全部合計して、合計額が1千万円を超えるかどうかで判定することになります。 被相続人の事業を2以上の相続人が分割承継又は共同相続した場合には、相続開始年の翌年以後の課税・免税事業者の判定に取り込むのは、各相続人の承継割合に応じた課税売上となります。 ◆相続開始年だけは特殊な扱い ただし、相続開始年に限っては、扱いが少し異なります。①課税事業同士の相続承継、②相続人の課税事業への被相続人の免税事業の相続承継、③相続人の免税事業への被相続人の課税事業の相続承継、④免税事業同士の相続承継、これら4ケースがあります。 相続人の課税・免税事業者判定は、①②のケースは年間を通じた課税事業者、③は相続日の翌日からその年の年末までの期間の課税事業者、④は免税事業者です。 ◆相続開始年に遺産分割確定した場合でも 年末までに遺産分割が済んでいる場合でも、未分割の場合と同じく、基準期間における被相続人の課税売上高を各相続人の法定相続分で按分した金額により相続人の納税義務を判定してよい、との「文書回答事例」が公開されています。 ◆特定遺贈又は死因贈与の場合 なお、相続の際、被相続人の消費税納税義務を考慮するのは、「相続(含包括遺贈)」による承継の場合のみです。 たとえ相続承継であったとしても、特定遺贈・死因贈与による承継の場合には、上記の納税義務可否判定規定の適用はありません。これは、通達で示されている考え方で、この場合には、特定財産受遺者又は死因贈与契約受贈者の、自分の事業のみの基準期間課税売上高のみによって判定します。 消費税法には、「相続」には包括遺贈を含むと規定されていて、そのことにより、特定遺贈・死因贈与は、包括的承継としての相続承継から除外されていると反対解釈されるため、通達でそれを示しているわけです。

【時事解説】広がる変動価格制、その狙いとは その2

 2021年3月から東京ディズニーリゾートのチケットは変動価格制(ダイナミックプライシング)になります。近年、ダイナミックプライシングは遊園地の入園料だけでなく、野球やサッカー観戦と多くの業種で広がりを見せています。 背景にはAI(人工知能)の発達があります。ダイナミックプライシングのポイントは、価格をいくらにするか、価格の高い期間と安い期間をいつにするかといった点にあります。  従来から、衣類のバーゲンセールや食品スーパーの閉店前の値下げといった、売れ残りを回避するための値下げは行われてきました。ただ、10%引きにするか、あるいは20%引きにするかは店員の裁量で決められることが少なくありません。値引き率が大きいほうが売れる数は上がる傾向があります。が、価格が高いほうが商品一つあたりの利益率は大きくなります。価格や期間の設定は、もっとも利益が大きくなる点を探し当てることが大切です。  AIは過去の販売状況や天候などのデータを大量に解析して何が売れ行きを左右するか、さらには休日、天候、気温、風速など、どれが販売数量に大きく影響を及ぼすかなどを計算します。人間が手計算で求めたら膨大な時間がかかる事項をAIは短時間で正解を導きます。AI技術の発展があったからこそ、ダイナミックプライシングが導入しやすくなったといえます。  とはいえ、AIも完ぺきではありません。価格が高すぎると顧客の反感を買うため、担当者がAIの提示よりも安く価格を設定した事例もありました。まだ、改良の余地はありますが、今後もダイナミックプライシングはさらに広まりそうです。(了) (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】広がる変動価格制、その狙いとは その1

 2021年3月から東京ディズニーリゾートのチケットは変動価格制になります。変動価格制というのは、商品やサービスの価格を需要と供給の状況に合わせて変動させる価格戦略を指します。これまで、東京ディズニーリゾートのチケットは年間を通して同じ金額でしたが、変動価格制により混雑が見込まれる時期は高く、閑散期は安くなります。具体的には、大人の1日券(1デーパスポート)は現在8,200円に固定されていますが、土日祝日や春休み・ゴールデンウィークなどの繁忙期は8,700円と現状から500円引き上げる予定です。  このような変動価格はダイナミックプライシングといわれ、近年、様々な業界で導入の波が押し寄せています。企業にとってのメリットは利益の増加が期待できる点にあります。混雑しているときは、従来よりも高い価格で商品・サービスを販売するので、より多くの売上に繋がります。閑散期は価格が安くなるので、従来よりも顧客は商品・サービスを購入しやすくなり、売上数の増加が期待できます。顧客にとっても閑散期などは、混雑する期間よりも安く商品・サービスが得られるので、お得感が増します。  もともと、ダイナミックプライシングは宿泊料など、旅行業界で取り入れられていました。旅行の計画を立てるとき、同じ部屋でもゴールデンウィークと平日では宿泊代金が大きく異なるのをよく目にします。  ホテルやツアー料金だけでなく、すでに、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンやJリーグ、プロ野球、コンサートなど、すでに多くの業界でダイナミックプライシングは導入されています。加え、駐車場やタクシーの迎車料金に至るまで広がりを見せており、今後はますます増えると予想されます。(つづく) (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》新型コロナウイルス感染症と医療費控除

◆マスク購入費用は医療費控除の対象? 国税庁は、新型コロナウイルス感染症に関して、申告や納税などの税務上の取扱いに関するFAQを令和2年3月から公開していますが、現在も更新を続けており、横断的にきめ細かな説明をしています。 今年の確定申告で、医療費控除を申告する方の中には「マスクの購入費用は医療費控除の対象になるのか」と疑問に思った方もいらっしゃるかと思いますが、この問いに関してはFAQの中で「No」という回答を出しています。 ◆医療費控除の定義 医療費控除の対象となる医療費は、 医師等による診療や治療のために支払った費用 治療や療養に必要な医薬品の購入費用と定義されています。 マスクの購入費用については「病気の感染予防を目的に着用するもの」であるから、治療や療養のための費用ではないため、医療費控除の対象にはならないのです。 ◆オンライン診療の諸費用は? オンライン診療に係る費用についても回答があります。オンライン診療料やオンラインシステム利用料については、「診療に直接必要な費用に該当する」ので、医療費控除の対象になります。 ただし、「医薬品の配送料」については、治療に必要な医薬品の購入費用に該当しないので、医療費控除の対象になりません。 ◆PCR検査費用は? 医師の判断によりPCR検査を受けた場合、この費用は医療費控除の対象になります。ただし、医療費控除の対象は自己負担部分に限られ、現状、医師の判断によるPCR検査は原則公費負担によって行われるため、このケースで医療費控除の対象になる費用が出ることは非常にまれです。 「感染していないことを明らかにするためのPCR検査」等、自己の判断で受けた検査費用に関しては、医療費控除の対象となりません。ただし、検査の結果「陽性」であることが判明し、引き続き治療を行う場合には、その検査は治療に先立って行われる診察と同様に考えることができるので、医療費控除の対象となります。

《コラム》売却活動前の測量費

 相続した土地で駐車場を営む個人事業主が、土地活用の方針を決めるにあたり、隣地地権者と土地境界の測量を行い、その後、自身で活用する見込みがなくなり、当該土地の売却に転じた場合、測量費は譲渡所得の計算上譲渡費用を構成するでしょうか。 ◆譲渡費用に該当するには 所得税法では、譲渡費用の範囲を①資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記若しくは登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要した費用 ②借家人等を立ち退かせるための立退料、土地の上にある建物等の取壊費用、既に売買契約を締結したが更に有利な条件で他に譲渡するため当該契約を解除した際生じる違約金、その他譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用としています。 売却方針決定前に支出した測量費が譲渡のため直接要した費用に該当するかは、例えば不動産仲介会社に土地売却の意思を伝え、媒介契約を締結して売却活動に入り、買主が見つかり売買契約の中で境界確定が条件とされ引渡しに至れば要件を充たすものと思われます。 ◆取得費または維持管理費となるとき また譲渡資産の修繕費、固定資産税その他その資産の維持管理費用は、譲渡費用に含まれず、土地の測量費は各種所得金額の計算上必要経費に算入されたものを除き、土地の取得費に算入するとされています。 売却方針が定まらない場合には、測量費を取得費とするか、アパート賃貸への転用、駐車場の継続等を想定して隣地との紛争予防をはかるため不動産所得の必要経費(維持管理費)とすることが考えられます。 ◆概算取得費に注意する 相続で取得した土地を譲渡する際、土地の取得価額が不明であれば、概算取得費として土地譲渡代金の5%相当額を控除することができます。 ただ、概算取得費を計上する場合、測量費など支出した取得費は、譲渡所得金額の計算上、控除できなくなりますので測量費を取得費とする場合は注意が必要です。 確定申告期限までに売却方針が決まらないとき測量費を維持管理費か取得費とするかを含め状況に応じた判断が求められます。

《コラム》贈与税の配偶者控除と登記

◆居住用不動産を贈与したときの配偶者控除 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで控除(配偶者控除)できます。 この特例の適用を受けるには贈与税の申告書と次の書面の提出が必要です。①贈与日後10日経過後の戸籍謄本・抄本②同戸籍の附票の写し③居住用不動産の登記事項証明書等 ◆店舗兼住宅の持分贈与を受けた場合 店舗兼住宅について、例えば居住用部分の50%の贈与をしたとして、登記面ではそれが全体の25%の持分贈与と表記されたとしても、居住用部分のみの贈与と扱われることになっています。 また、居住用部分がおおむね90%以上の場合は全て居住用不動産として扱うことができます。 ◆居住用不動産贈与と相続税の扱い 配偶者控除適用居住用贈与不動産は、相続開始前3年内贈与加算の対象外です。 また、その贈与が相続開始年になされた場合は、その居住用不動産のうち、贈与税の配偶者控除があるものと仮定して控除される部分は、相続税の課税価格に加算されず、相続税の対象となりません。 ◆所有権移転登記は要件か? 贈与の対象となった居住用不動産の登記事項証明書の添付は、この贈与税の配偶者控除特例の適用要件でした。でも、贈与による所有権移転登記そのものは、適用要件ではありません。 それで、平成28年に、贈与による居住用不動産取得の事実が確認できる書類を添付する事に省令改正されました。登記事項証明書は、その事実確認書類の一つの例示例となっています。 ◆登記を要件にできない色々な理由がある 登記には第三者対抗要件はあるものの、義務ではなく、任意なので、税法の適用要件に登記を義務づけることは憚られるのだと思われます。 それに、店舗兼住宅での登記のように、居住部分のみの登記は受け付けられないし、大きな敷地の一部の居住部分の贈与の場合、分筆等が必要となる場合などを考慮すると、測量費なども含め、登記費用負担が居住用不動産贈与の特例適用の妨害要因になってしまうからなのだと思われます。

《コラム》法改正情報!子の看護休暇・介護休暇の時間取得

◆「子の看護休暇」とは 子供の急な発熱や体調不良、けが等は心配なものです。育児と仕事を両立する労働者にとっては、看病のために仕事を休む必要がある場合もありますね。 そのような時に取得できる休暇として、育児介護休業法による「子の看護休暇」があります。 これは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、病気、けがをした子の看護、または子に予防接種、健康診断を受けさせるために、1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで取得できる休暇のことです。 ◆改正法で時間単位での取得が可能に これまで、子の看護休暇は「1日」もしくは「半日」の単位で取得可能であり、そもそも労働時間の短い労働者(1日の予定労働時間が4時間以下の者)は半日単位での取得対象外とされていました。 これだと、予防接種や軽度の病気である場合、数時間程度の休暇で事足りるのに、必要以上に休暇を取ることになり使い勝手が良くないという声がありました。 この点、令和3年1月1日から、この休暇をより柔軟に取得できるよう法改正がなされ、時間単位での取得ができることになります。 ◆介護休暇も同様に対象となる 同じ育児・介護休業法で定める「介護休暇」は、要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者が、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで取得できる休暇のことです。こちらも、今回の改正で時間単位での取得が可能となります。 ◆事業主は規定の見直しを! 法改正に伴い、育児介護休業規定の見直しが必要です。更に、法の求めを上回り、労働者により配慮した措置として、始業・就業時間に連続しない「中抜け」を認める制度とするかの検討が必要です。 また時間単位の取得により、勤怠管理に影響が出る点も注意してください。 ◆両立支援等助成金について 時間単位で利用できる有給の、子の看護休暇や介護休暇を導入し、休暇を取得した労働者がいる等、一定の要件を満たした事業主は、国からの両立支援等助成金の支給対象となりますので、対象となるか確認してみましょう。

【時事解説】スマートシティーで生活はどのように変わるか その2

 スマートシティーの実証実験が進んでいます。スマートシティーとは、ITや環境技術などの先端技術を駆使した街づくりを指します。国内でスマートシティー関連事業に取り組む地域は現在160ほどあります。  福島県会津若松市を例に挙げると、同市では様々な実証実験が進められています。観光名所の鶴ヶ城では、新型コロナウイルス感染症対策のため密集回避システムが稼働しています。これは、AIを搭載した3Dカメラが人の動きを感知。人との間隔が1.5メートル以内になると赤色で表示されます。結果、人との距離を保ち、密を避けることができます。  こうしたビジネスチャンスは国内にとどまらず、輸出での利益にも期待が寄せられています。背景には、政府がインフラ輸出に関する新たな戦略を明らかにしたことがあります。従来、インフラの輸出といえば、道路や鉄道といった「重厚長大」が中心でした。が、今後は、ESG(環境・社会・企業統治)分野に重点が置かれるようになります。スマートシティーは環境技術を駆使するため、輸出の強化が掲げられています。  現在、ベトナムの首都ハノイやミャンマーの都市マンダレー、インドなど、東南アジアでは多くの都市がスマートシティー建設を決定しています。1都市のインフラ開発事業に参加するだけでも数百億円規模のビジネスになるともいわれています。これらビジネスチャンスを得るため、政府は日本企業が東南アジア諸国連合(ASEAN)で手がけるスマートシティー事業を後押しする姿勢でいます。  競合する中国や韓国にどこまで対抗できるか。スマートシティー事業が日本に大きな利益をもたらすことに期待したいところです。(了) (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】スマートシティーで生活はどのように変わるか その1

 スマートシティーの実証実験が進んでいます。スマートシティーとは、ITや環境技術などの先端技術を駆使した次世代の街を指します。技術で都市機能や暮らしを向上させることが目的です。サービスは多岐に渡りますが、交通分野ならば、車の走行データなどのビッグデータを活用し、渋滞の緩和や物流の効率化といったことが挙げられます。  国内には「スマートシティー構想」を掲げ関連事業に取り組む地域や本格事業化を進める企業が多数あります。行政のデジタル化の機運が高まる中、街づくりにもその波が押し寄せているともいえます。 渋谷エリアではアプリサービス「shibuya good pass」の実証実験が始まりました。これは、渋谷区の在住者や渋谷エリアで働く人を対象としたアプリです。ユーザーは月額基本料を支払うと、連携する都市サービスを利用できるというものです。  当初用意されるサービスは、約10ジャンルあります。一例を挙げると、小型車やマイクロバスを使った月額乗り放題のサービスがあります。利用者はスマートフォンから車を呼び出します。すると、AIが最適ルートを導き出し、近くを走る車両を配車します。家から2キロメートル先の店で食事がしたい。そんな時、アプリを利用すれば軽自動車などが家の近くまで迎えにきてくれます。月額乗り放題なので、タクシーのようにメーターを気にすることもありません。このほかにも、月額オフィス会員サービスや再生可能エネルギーの提供、都市農園など、多岐に渡るサービスが用意されています。こうしたサービスをまず渋谷で実装し、その後は国内の複数の都市に展開することでさらに収益を上げていくことが可能になります。(つづく) (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)