Column

《コラム》電子帳簿保存法の電子取引データ保存の猶予改正

◆改正された電子取引データ保存 令和5年12月31日まで「宥恕(ゆうじょ)措置」が取られていた電子取引データ保存に関するルールが、令和5年の税制改正で変更されています。 令和4年の税制改正で設定された、やむを得ない事情がある場合、税務調査等で出力書面の提示または提出に応じられれば、令和5年末までの2年間は電子取引データの紙保存も許されていたのですが、令和5年改正において宥恕措置は年末で廃止と明言されました。 ◆宥恕措置は終わるが猶予措置ができる 宥恕措置は終わりますが、「猶予措置」が新たに設定されました。①保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)②税務調査等の際に、電子取引データのダウンロードの求め及び電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めに応じることができるようにしている場合 上記の条件を満たしている場合は、改ざん防止や検索機能などの保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子データを単に保存しておくことができるとしています。 宥恕措置との違いが分かりにくいようですが、宥恕措置では調査等での「ダウンロードの求め」に応じる必要はありませんでした。新たな猶予措置では紙保存した電子取引データも「ダウンロードの求め」に応じる必要がある、というのが異なる点です。 公官庁内のDX・ICT化が急速に進む中、市井との温度差を感じ取ったのか、なし崩し的な改正に感じられます。法的には緩くなった半面、ペーパーレス化や事務合理化を推進し、宥恕期間終了時からのルールを策定しようとしていた企業は、改正によって振り出しに戻るケースもありそうです。 ◆宥恕措置中の出力書面の取扱い 宥恕措置中の電子取引データをプリントアウトした書面は、保存期間が満了するまではそのまま保存しておき、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば問題はないとされています。

《コラム》今さら聞けない「労使協定」とは

◆労使協定の特徴・時間外や休日に労働(残業)をさせる場合・フレックスタイム制や変形労働時間制を採用する場合 会社がこれらを行おうとする場合に欠かせないのが労使協定の締結です。労使協定を一言で表すと「会社と従業員との間で決めた約束を書面にしたもの」となります。また、労使協定の特徴で代表的なものには次のようなものがあります。 ◆労使協定の内容は法律に拘束される 例えば会社と従業員との間で「繁忙期の残業には残業代を支払わなくてもよい」という内容の労使協定を締結した場合はどうでしょう。 労働基準法37条では「法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働をさせた場合や法定休日に労働をさせた場合には割増賃金(残業代)を支払わなければならない」ことが規定されています。したがって「繁忙期の残業には残業代を支払わなくてもよい」という内容の労使協定は、労働基準法37条に拘束されるため無効になります。言い換えれば、法的裏付けのない内容の労使協定は無効になるということになります。 ◆届け出なければ効力が発生しないものも 労使協定が「会社と従業員との約束」であるならば、当事者間で合意していれば効力が発生するのが普通の法律での考え方です。しかし、労使協定の中には労働基準監督署に提出して初めて効力が発生するものがあります。その代表例が36協定(時間外・休日労働に関する協定)です。せっかく締結しても届け出を忘れたまま残業や休日労働をさせている場合には、労働基準法違反になりますのでご注意ください。 ◆届け出が義務付けられているものがある 効力が発生しないものとの違いが分かりづらいでしょうが大切な論点です。会社と従業員との力関係の違いを考慮して、従業員に不利な内容にならないよう労働基準監督署がチェックを入れるため、一部の労使協定に届け出を義務づけています。ただし、これは効力が発生しないものと異なり届け出を忘れた場合でも、罰則こそありますが、労使協定の効力は発生します。この労使協定の代表例にはフレックスタイム制や変形労働時間制に関する協定があります。

《コラム》固定資産税のしくみ

◆土地・家屋・償却資産にかかる税 固定資産税は、その名の通り固定資産にかかる税です。日本には明治時代から地租(土地に対する税)や家屋税(住宅にかかる税)がありましたが、戦後1950年に、シャウプ勧告に基づく地方税制改正の一環として、地租や家屋税を統廃合し、原則市町村税として創設されました。 2020年度のデータですが、固定資産の納税義務者(法人・個人合計)は、土地が4,138万人、家屋が4,214万人、償却資産が472万人とのことです。市町村税に占める固定資産税の割合は約4割と、市町村の運営に欠かせない財源となっています。 ◆固定資産の評価方法 土地や家屋についての固定資産税は登記をすると自動的に税額が計算され、納税通知書が送られてくるため申告不要です。償却資産については、申告が必要となります。・各固定資産の評価方法は、土地:宅地や農地等、地目別に売買実例価額等を基礎として、評価額を計算。宅地については公示価格等の7割を目途に評価額を計算家屋:再建築価格(その時点で新築する場合に必要となる建築費)に経年減点補正率等を乗じて評価額を計算償却資産:取得価額を基礎として、経年減価を考慮して評価額を計算となっています。土地・家屋の評価については3年に1度見直しを行います。また、評価額は縦覧期間に確認ができ、疑問がある場合は再審査の申し出ができるようになっています。 評価額を基に課税標準額が決定されます。ただし、納税者の負担感に配慮し、評価額が急激に上昇した場合でも税負担をゆるやかに上昇させる負担調整措置が講じられています。 ◆税の計算と特例 標準課税額が土地30万円未満、家屋20万円未満、償却資産150万円未満であれば課税されません。また、標準税率は1.4%です。標準課税額の決定や税額については政策的な特例措置があり、特に課税される対象が土地や家屋、建造物等の償却資産ということもあり、特例措置も様々です。 多様な特例があるため、その特例を延長するにあたり、税制改正大綱では長々とその情報が書き連ねてあります。令和5年度税制改正大綱には「固定資産」というワードが70回以上登場しています。

《コラム》相続税申告前に相続人が死亡した場合

 短期間に相続が相次ぎ発生することがあります。父、母、子2人の4人の親族関係で母が4月1日に死亡、父と子2人が相続人となりましたが、相続税の申告前に父も続けて8月1日に死亡した場合の申告は、どうなるでしょうか? ◆申告義務は相続人に承継される 一次相続(母)の相続税申告義務は、父と子2人にありますが、父がその後、死亡したため、父の申告義務は相続人(子2人)が承継します。子2人は、一次相続(母)の相続人として相続開始を知った日の翌日から10か月後の翌年2月1日が申告期限となり、父から承継した一次相続(母)の申告期限は、父の相続開始を知った日の翌日から10か月後の翌年6月1日となります。 なお、二次相続(父)の申告期限は、父の相続開始を知った日の翌日から10か月後の翌年6月1日となります。 ◆一次相続の遺産分割協議書の記載 子2人は父の権利義務を承継します。一次相続(母)の遺産分割協議書には、一次相続の被相続人(母)、二次相続の被相続人(父)の最後の本籍、最後の住所、出生日、死亡日、氏名と、相続人兼父相続人として子2人の本籍、住所、出生日、氏名が記載されます。   子2人は、母の遺産分割協議に参加し、父と子2人がそれぞれ、母から相続する財産、債務について遺産分割協議書を作成します。また、父が一次相続で母の財産・債務をどのように承継するかは、父の生前の希望も尊重しつつ、二次相続の承継による税負担と併せて検討することになります。 ◆法定相続情報は被相続人ごとに作成 一次相続(母)の相続税申告書には、一次相続(母)の法定相続情報一覧図(相続人は、父と子2人)と二次相続(父)の法定相続情報一覧図(相続人は、子2人)を、それぞれ別々に作成し、添付する必要があります。 これは、法定相続情報一覧図は、被相続人が死亡した時点で誰が法定相続人であるかを示すものだからです。 したがって一次相続(母)の法定相続情報一覧図には、被相続人は母、相続人は父と子2人の情報を記載し、二次相続(父)の法定相続情報一覧図には、被相続人は父、相続人は子2人の情報を記載します。先に死亡した母を「亡妻」と記載することもあります。2つの法定相続情報一覧図を重ねることにより、一次相続の申告は二次相続を経て子2人に承継されることが示され、遺産分割協議書の記載と整合します。

《コラム》1月以降退職者の住民税特別徴収の継続と一括徴収の分岐

◆退職後に勤務が継続か否かで変わってくる 個人の住民税は、その年1月1日居住の市町村から前年の所得を基に課税されます。納税は、給与所得者の場合、給与支払者により、6月から翌年5月までの給与から「特別徴収」され納税されます。 退職した場合、退職日が6月1日から12月31日までであるときは、退職の月までは「特別徴収」により給与から天引きされますが、その後は「普通徴収」に切り替わり、自身で市町村に納付することになります。ただし、次の勤務先で「特別徴収継続」の手続きをすれば翌月分以降は新たな勤務先から継続して特別徴収・納付となります。 では、退職日が1月1日以降の場合はどのような手続きになるのでしょうか? ◆特別徴収継続か一括徴収かの分岐点(1)退職後も継続し勤務先がある場合 退職日が1月1日から4月30日までの場合で、退職後も次の勤務先(=給与支払者)があるときは、退職月の翌月10日までに「特別徴収継続」の手続きをすれば翌月分以降は新たな勤務先から継続して特別徴収・納付となります。 退職日が5月1日から5月31日までの場合は、5月分のみですので、通常通りの住民税額が最後の給与から徴収されます。(2)勤務先がないか空白期間がある場合 退職後次の勤務先が決まっていなかったり、決まっていても次の給与までに空白期間があったりする場合は、退職する会社が5月分までを一括徴収し納付しなければならないこととなっています。 ただし、退職時点で支給される給与や退職金から一括徴収額を差し引きしても納付額が足りない場合は、その分の金額を普通徴収で納付することになります。 ◆特別徴収継続の場合は速やかに手続きを! いつの時点で退職するにせよ、「特別徴収継続」の手続きは、「給与所得者異動届出書」を提出することにより行われます。旧会社ではそれまで特別徴収して納付した金額の実績を記載し、新会社では今後の特別徴収と納付を行う旨の記載をします。この届出書は会社を通して提出することになりますので、新旧会社の給与計算担当者とよく相談して、書類の不備や理解不足による住民税延滞にならないよう注意が必要です。

《コラム》相続時精算課税の普及が戦略

◆相続時精算課税制度は評判悪し 相続時精算課税制度は、贈与額が2500万円に達するまでは贈与税がかからず、2500万円を超えた部分は贈与税率20%で課税される制度ですが、贈与者死亡時の相続税は、相続時精算課税の適用を受けた受贈財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額との合算額を基に計算し、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。 なお、次に掲げるようなデメリットがあり、この制度の積極的な活用の呼びかけは少なく、利用者の数も限られていました。 ◆現行相続時精算課税制度のデメリット(1)暦年課税制度に戻ることが出来ない(2)基礎控除の制度がなく110万円以下の贈与でも贈与税の申告が必要(3)少額でも贈与税申告書の提出漏れには20%の加算税(4)受贈財産が災害等で滅失しても考慮されない(5)不動産だと小規模宅地の特例が使えず、不動産取得税の負担があり、登録免許税も相続時より高い(6)相続税の物納には使えない(7)贈与者である祖父の死亡前に相続時精算課税制度適用者である父が死亡したような場合、その相続人となる子は、父の相続に係る相続税の負担と、承継した父の相続時精算課税制度適用による納税義務の負担との二重課税となる ◆デメリット部分解消への税制改正 今年の税制改正で、上記の(2)~(4)について見直しがなされることになりました。1.相続時精算課税制度内に110万円の基礎控除制度が設けられ、毎年の特定贈与者からの贈与額からその基礎控除が引かれるとともに、その範囲内の贈与は申告不要とされ、相続に際しては、課税価格に加算される相続時精算課税受贈財産の価額は、先の基礎控除をした後の残額となります。110万円以下の毎年贈与だったら、暦年課税の3年内贈与加算相当部分も圧縮され、より優遇です。 相続時精算課税で受贈した土地・建物が相続税申告時までに災害により滅失等の被害を受けた場合は、相続税の申告での課税標準への加算額から当該被害額を減額することとされました。 今後、相続時精算課税制度の利用が大幅に増加することが予想されます。

《コラム》インボイス制度 免税事業者の選択と経過措置

◆免税事業者はインボイスで選択を迫られる 令和5年10月開始のインボイス制度は、免税事業者の方に選択を迫ります。免税事業者のままでいた場合、今まで認められていた取引相手の仕入税額控除が減ってしまう可能性があるからです。 ◆課税形態によって異なる取引相手への影響 では、実際どんな取引相手に影響があるのかを見てみましょう。①自分が免税事業者、相手も免税事業者 お互い消費税の納税義務が免除されているので、影響はありません。また、取引相手が消費者の場合も、仕入税額控除を行わないため、影響はありません。②自分が免税事業者、相手が簡易課税制度適用の課税事業者 簡易課税制度は「みなし仕入れ率」で売上に係る消費税額から控除を行うため、適格請求書を発行していない免税事業者相手でも影響はありません。③自分が免税事業者、相手が課税事業者 簡易課税制度でない課税事業者は、令和5年10月以降は適格請求書がなければ、仕入税額控除ができません。ただし、令和5年10月から最初の3年間は免税事業者の請求する消費税額の80%、次の3年間は50%を仕入税額控除可能です。 つまり、③の場合は経過措置の適用があっても、取引先は今までよりも仕入税額控除額が減り、消費税納税額が増えるため、免税事業者との取引については購入価格の実質的な値上がりが起きてしまうのです。 ◆課税事業者になるか、ならないか? 免税事業者が課税事業者になり、適格請求書発行事業者登録をすれば、課税事業者の取引先との関係は継続しやすいでしょうが、消費税の納税義務が発生するため、現状の売上のままだと利益は減少します。 逆に免税事業者のままでいると、取引先の仕入税額控除が減るため、関係に影響が出る可能性があります。また、免税事業者が消費税を請求して受け取る権利はあるものの、あえて消費税を含まない請求に変更した場合は、現状より利益は減少します。 免税事業者の方は、経過期間の80%・50%の仕入税額控除、取引先の状況、取引先との関係値等、様々な要因を加味して、いつから適格請求書発行登録をするのか、はたまたしないのかを決めることになります。価格改定の話をしなければならないケースも出てくるのではないでしょうか。

《コラム》労働生産性と健康経営

◆「健康経営」とは 健康経営とは従業員の健康にかかる支出をコストではなく投資として捉える戦略的な経営手法のことです。 ◆体調不良に伴う労働生産性損失 労働生産性と健康経営との関係を考えるうえで大切な概念が2つあります。 「プレゼンティーズム」と「アブセンティーズム」です。体調不良による労働生産性の損失と言われると、何らかの身体的な病気で会社を休むという状況を思い浮かべるのではないでしょうか。これは「アブセンティーズム」と言います。 一方で出勤はしているものの体調がすぐれず生産性が低下している状態を「プレゼンティーズム」と言います。近年労働生産性損失の関連で注目されるのが後者の「プレゼンティーズム」です。なぜなら欧米を中心とした多くの研究でプレゼンティーズムによる労働生産性の低下による経済的損失の方が、アブセンティーズムによる経済的損失より大きいという結果が示されているからです。 ◆プレゼンティーズムによる労働生産性低下 プレゼンティーズムの原因としては、慢性疲労症候群、うつ病、腰痛、頭痛、花粉症に代表されるアレルギー症などが挙げられます。例えば毎年花粉症の症状に悩まされる人は花粉症の時期になると目のかゆみや鼻詰まり、止まらないくしゃみなどの影響で仕事に集中することができないというイメージが自身の体験からも湧くかと思います。また、さらに女性に関しては女性特有の健康課題による労働生産性の低下が社会的な課題として注目され始めています。 このような状態の時には労働生産性が低下し、結果的に企業の損失につながっていることがお分かりいただけると思います。 ◆労働生産性と健康経営の関係 「プレゼンティーズム」も「アブセンティーズム」も、心身の健康や生活習慣の良くない従業員ほど高まる傾向が確認されています。 顕在化しているリスクはもちろん潜在的なリスクのある従業員に対して、若年層を含め健康意識の低い段階で会社側から積極的に健康に関する働きかけをすることが、結果として自社の労働生産性損失を抑えることにつながります。

《コラム》一括償却資産の損金(必要経費)算入のタイミング

◆一括償却資産とは パソコンなどの器具及び備品その他減価償却資産を取得した際に、取得価額が30万円未満の少額である場合には、法定耐用年数より短い期間で損金(法人税)・必要経費(所得税)(以下、“経費”とします)にできる規定があります。(1)10万円未満の場合は消耗品等として取得時に全額経費となります。(2)10万円以上20万円未満の場合は、一括償却資産として3年間の定額償却にできます。※下記(3)の選択も可能です。(3)10万円以上30万円未満の場合は、300万円を限度として全額経費にできます。ただし、これは中小企業等のみに適用です。 取得価額10万円以上20万円未満の資産で耐用年数よりも短い期間で経費にできるのが「一括償却資産」です。この制度は中小企業等以外の法人も使えます。金額の上限もありません。 ◆一括償却資産のメリットとデメリット 一括償却資産のメリットは、3年での定額償却ですので、個々の資産の本来の法定耐用年数の確認をする必要がなくなります。また、本来の耐用年数よりも早く経費にすることができます。さらに、一括償却資産は償却資産税の申告対象から外れますので固定資産税が掛かりません。 一方のデメリットとしては、3年の償却期間中に資産を滅失・譲渡した場合でも、未償却額残高を損金算入することができないことがあります。すなわち、減価償却を打ち切れないため、帳簿からその資産を取り除く処理ができません。 ◆途中で売却や除却をしても償却期間は3年 資産を売却したり除却した場合には、通常は、その資産の帳簿価額(=取得価額からそれまでの減価償却費を控除した残額)を売却原価もしくは除却損として計上します。しかしながら、一括償却資産としたものに対してこの処理をするのは間違いとなります。その資産がなくなったとしても会社の帳簿上には未償却の残額が残り、あくまでも36か月(3年)かけて経費にすることになります。 ただし、会社が解散して清算に入り、残余財産が確定した場合には、残余財産の確定の日の属する事業年度終了の時における一括償却資産の金額が事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとなります。残余財産が確定するとその先はありませんから3年縛りは適用されません。

《コラム》相続税法第58条の改正

◆相続税法第58条通知 相続税法第58条に、市町村長等は、死亡届書を受理した場合、翌月末までに所轄の税務署長に届書記載事項を通知しなければならないとの義務が定められています。 この条文が今年改正されました。死亡届事項の通知義務者が法務大臣に、通知先が国税庁長官に変わり、市区町村長の通知義務の対象が、当該死亡者所有土地・家屋に係る固定資産課税台帳の登録事項に変わりました。通知期限は同じです。 この改正の施行期日は、令和6年3月1日又は改正戸籍法施行日(令和6年5月31日までの日)のいずれか遅い日です。 ◆改正戸籍法とは 改正戸籍法というのは、デジタル戸籍の作成の主体を市区町村から、戸籍事務機関委任の委託元の法務省に移し、市区町村長は、届書・申請書等の戸籍記載に必要なものを受理した場合に、当該届書等を電子化画像情報にして法務大臣に送信し、法務大臣は、その画像情報を基に磁気ディスクに記録する、というものです。 その結果、税務サイドへの通知の主体が市区町村長から法務大臣に変わる事になり、それに対応して通知先も、所轄税務署長から国税庁長官に変わったわけです。 ◆デジタル・ガバメント また、法務大臣からの通知は、デジタル戸籍が前提であり、これはそもそも、デジタル・ガバメント推進の国家戦略の一環としての施策なので、オンラインでの通知が必然となりますが、市区町村からの通知は、従来の通知義務履行と同じく書面での通知も可能なようです。 ◆固定資産課税台帳の登録事項の通知 市区町村長から所轄税務署長への通知の対象の、土地・家屋に係る固定資産課税台帳の登録事項については、今年の税制改正で新たに加わったものです。ただし、財務省HPの改正税法の解説には、既に事実として「その通知に係る被相続人の所有していた固定資産課税台帳に登録されている土地、家屋及び償却資産等に関する資料を併せて送付することとなっていました」と書かれています。そう出来る根拠は示されていませんので、今年の改正で、正式に法定化する事で、グレーの解消にしたのかもしれません。