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《コラム》法定相続情報証明制度

◆法定相続情報証明制度とは 相続人が法務局に対して、戸籍謄本等の必要書類及び相続関係を記載した一覧図を提出することにより、登記官がその内容を確認し、認証文付の一覧図の写しを交付する制度です。 平成29年5月29日から全国の法務局でスタートした比較的新しい制度です。 ◆なぜ、この制度が必要となったのか? 相続登記や預貯金の解約などの相続手続において必要となる書類は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等の多くの戸籍関係書類が必要となります。これらを手続ごとに提出し、何度も同じ書類を集めなければなりませんでした。 この法定相続情報証明制度がスタートしたことにより、登記官が内容を確認して交付された認証文付きの一覧図の写しを提出することにより法定相続人が一目瞭然となるため、相続人及び提出先の担当部署の負担が相当軽減されることとなりました。 ◆必要書類 夫、妻、長男、長女という家族で夫が死亡した場合の必要書類を記載していきます。① 夫の出生から死亡までの戸籍謄本② 妻、長男、長女の戸籍謄本③ 夫の住民票の除票又は戸籍の附票 ①~③の書類を収集し、申出書を作成し管轄法務局に提出します。 法定相続情報一覧図に妻、長男、長女の住所を記載して欲しい場合には、上記①~③に加えて妻、長男、長女の住民票を提出します。 ◆最後に 相続手続における戸籍関係書類の収集を1回にし、法務局に提出することにより戸籍関係書類に代わる法定相続情報一覧図を交付してもらい、相続人の戸籍収集の負担を軽減し、提出先(銀行等の金融機関)の担当部署の戸籍謄本等の解読が不要となり法定相続情報一覧図によって明らかになるということです。 相続人にもメリットですし、提出先にもメリットともなるので積極的に利用していきたい制度です。

【時事解説】中小企業成長促進法について その2

 2020年10月1日に中小企業成長促進法が施行されたことに伴い、中小企業目線での政策体系の整理が行われています。以下でその概要についてみていきましょう。  中小企業の計画支援のスキームは、成長段階に応じた体系に簡素化されました。まず、基礎体力をつける段階の計画としては、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」が位置づけられています。これは経営資源の有効活用により、経営の向上を図るものです。  次に新分野進出を目指す段階の計画としては、中小企業等経営強化法に基づく「経営革新計画」が位置づけられています。これは新事業活動により経営の相当程度の向上を図るものです。新事業活動の定義に研究開発等が明示されるなど経営革新計画の定義見直しが行われたことを受けて、特定ものづくり基盤技術に関する研究開発等を行う特定研究開発等計画や、事業分野が異なる事業者の連携により新事業分野の開拓を行う異分野連携新事業分野開拓計画は廃止となり、経営革新計画への支援措置に包含されることとなりました。  さらに地域全体の活力向上を目指す段階の計画としては、地域未来投資促進法に基づく「地域経済牽引事業計画」が位置づけられています。これは産業集積、観光資源、特産物など「地域の特性」を活かして、地域に対して相当の経済的効果を及ぼすものです。今回の政策体系の整理を受けて、地域の特産物など「地域資源」を活かして、新商品やサービスの開発・生産を行う地域産業資源活用事業計画は廃止となり、「地域経済牽引事業計画」による支援措置に包含されることとなりました。  このように、類似の計画制度を統合し、中小企業の成長段階に応じた体系に簡素化されたのです。(了) (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業成長促進法について その1

 2020年10月1日に中小企業成長促進法が施行されました。この法律は、中小企業の廃業を防ぐとともに、中小企業が積極的に事業展開を行い、成長できる環境を整備するために必要な措置を講ずるものです。以下で同法の特徴についてみていきましょう。  1点目の特徴として、経営者保証解除スキームの拡充による事業承継の促進があげられます。具体的には、経営承継円滑化法の認定企業が事業承継する際に、経営者保証を不要とする新たな信用保証制度(経営承継借換関連保証)が新設されました。事業承継時における経営者保証が大きな課題となるなか、2020年4月よりスタートした事業承継特別保証においては、一般枠の範囲内で事業承継時に経営者保証を不要とする信用保証制度が措置されました。今回の中小企業成長促進法の施行を受けて、上記に加え、一般枠ではカバーできない融資に対して、経営者保証を不要とする信用保証の特別枠(最大2.8億円)が法律上措置されています。  2点目の特徴として、中堅企業への成長環境の整備があげられます。これは、中小企業が、増資や従業員増加により中小企業要件から外れても、地域経済牽引事業計画の実施期間(5年以内)は、中小企業とみなす措置を講じることで、中小企業向け支援を継続するものです。  3点目の特徴として、海外展開支援の強化があげられます。これは、海外拠点の分散化の促進など、中小企業の海外展開にかかる取組みを一層支援するため、日本公庫によるクロスボーダーローンを措置し、資金調達手段の多様化を図るものです。  このように中小企業成長促進法の下では、上記のような支援を通して、新型コロナ危機下での事業継続と雇用維持を後押ししているのです。(つづく) (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》役員変更登記

◆役員と任期 会社法上、役員とは取締役、監査役、会計参与となります。取締役及び会計参与の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなりますが、非公開会社は定款で定めることにより、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとすることができます。 一方、監査役の任期は原則として選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなります。定款によって選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとすることができるのは取締役及び会計参与と同様です。 また、任期を定款に定めることによって選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと伸ばせる非公開会社とは、定款において全ての株式に譲渡の制限が付されている株式会社のことをいいます。なお、有限会社は、譲渡の制限の定めがあるとみなされています。 ◆役員の任期の実情 公開会社であるメリットはあまりないため、上場会社であるような大きな会社を除き、新たに設立する会社のほとんどが非公開会社です。そうなると役員の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと定款で定めている会社が多いはずです。 平成18年5月1日に会社法が施行され、非公開会社の役員の任期が、10年まで伸ばせるようになりましたが、平成18年の会社法の施行後に役員の任期を伸長した会社は、任期を伸長した定款変更から10年を経過していれば、役員の任期は満了しており、役員の変更登記をしなければなりません。平成28年で会社法の施行から10年が経過しました。よって、役員の任期も満了している会社は多いのではないでしょうか。 ◆確認してみて下さい 株主総会を開催し役員の改選を行い、役員変更登記まで完了している会社は問題ありませんが、もし気になれば、この機会に定款や任期を伸長した議事録を見返してみてはいかがでしょうか。

《コラム》脱炭素化のためのグリーン化税制

 菅首相は臨時国会の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロ(森林吸収分などを差引き後の値)とし、脱炭素社会を目指すことを宣言、再生可能エネルギーなどグリーン化投資推進を成長戦略に位置付ける方針を示しました。対応策の一つと検討されるのが、グリーン化税制(炭素税、エネルギー税、車体課税、投資減税など)です。 ◆炭素税と排出量取引 炭素税は、温室効果ガス排出量に応じて課税されます。排出量に応じた価格付け(カーボンプライシング)を行い、市場メカニズムを通じて排出量の削減をはかります。   カーボンプライシングには、炭素税のほかに排出量取引があります。これは、排出者に排出量の上限を定め、他の排出者との取引を認める制度です。どちらも高い削減効果が認められますが、反面、経済成長を抑制する側面もあるといわれています。 日本では、炭素税「地球温暖化対策のための税」が導入されており、原油や石油製品など化石燃料に対して課税しているほか、東京都や埼玉県では、燃料・熱・電気の使用量の大きな事業者に対してCO2削減を義務付け、排出量取引制度が行われています。 ◆エネルギー税、車体課税と投資減税 エネルギー税は、化石燃料等の消費や、CO2を排出する車体に課税されます。揮発油税、軽油引取税など化石燃料の引取りや、自動車税など自動車の取得・所有に課税します。 投資減税は、CO2排出量が少なく、エネルギー効率の高い設備や製品への研究開発投資に対する税額控除や、減税措置など優遇措置をとり、経済的インセンティブを高めます。これらは排出量に応じた措置でなく、削減効果は限定的といわれています。 ◆グリーン化投資を新たな事業機会に ESGに取り組む上場企業への株式投資を促す開示制度(TCFD)も開始されており、世界は、低炭素でレジリエントな社会への転換を目指しています。 ポストコロナ下での経済は、環境と共存できることが求められます。中小企業にとっては、グリーン化のための製品・サービス開発が新たな事業機会となるかもしれません。

《コラム》テナント等の場合の令和3年度固定資産税減免措置

◆令和3年度固定資産税の減免措置 新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年2~10月の任意の連続する3か月の事業に係る収入が前年同期比30%以上50%未満減少した場合は、令和3年度の固定資産税・都市計画税が1/2に軽減、50%以上減少した場合は全額免除されます。 ただし、減免される対象は事業用家屋及び設備等の償却資産に対する固定資産税と、事業用家屋に対する都市計画税に限定されています。土地は対象ではないのでご注意ください。 ◆賃料を猶予した場合のカウントに注意 この減免措置は、不動産所有者がテナント等の賃料支払いを減免した場合や、書面等により一定期間賃料支払いを猶予した場合にも収入の減少として扱われます。 ただし、テナント等の賃料支払いを猶予したことによる収入減で、この措置を受けようとする場合は、3か月以上の賃料を、それぞれの賃料の支払い期限から3か月以上猶予していることが条件となります。 例えば、3~5月分の賃料を猶予した場合に、猶予された分の賃料は、3月分は6月以降に、4月分は7月以降に、5月分は8月以降に支払われる必要があるということです。 3~5月の賃料の猶予を6月に一括払いするとか、3月の賃料を4月に払う等、1か月のみのスライドをする等の措置では、収入の減少にカウントされません。 ◆固定資産税減免以外の措置 法人・個人が行った賃料の減額が、①取引先が新型コロナウイルス感染症関連で事業継続が困難・困難になりそうなとき②賃料の減額が取引先の復旧支援を目的としていて、それが書面で確認できるとき③取引先等に被害が生じた後、営業再開するための復旧過程にある時期に減額されたときのいずれかの条件を満たしていれば、その減額分については寄附金には該当せず、税務上の損金として計上することが可能です。 また、支援策はオーナーだけでなく、物件を借りている事業者等へは家賃支援給付金制度があります。