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《コラム》テレワーク等を促進 中小企業経営強化税制が拡充されました

◆中小企業経営強化税制の概要 中小企業経営強化税制とは、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、一定の設備を取得や製作等した場合に、即時償却又は取得価額の10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)が選択適用できるものです。 これまで、生産性向上設備(A類型)、収益力強化設備(B類型)が対象になっておりましたが、新たにデジタル化設備(C類型)が対象に加わりました。 ◆対象設備について デジタル化設備とは、下記のいずれかに該当する投資計画を達成するために必要不可欠な設備です。【遠隔操作】1)デジタル技術を用いて、遠隔操作をすること2)以下のいずれかを目的とすること A)事業を非対面で行うことができるようにすること B)事業に従事する者が、通常行っている業務を、通常出勤している場所以外の場所で行うことができるようにすること 【可視化】1)データの集約・分析を、デジタル技術を用いて行うこと2)1)のデータが、現在行っている事業や事業プロセスに関係するものであること3)1)により事業プロセスに関する最新の状況を把握し経営資源等の最適化※を行うことができるようにすること 【自動制御化】1)デジタル技術を用いて、状況に応じて自動的に指令を行うことができるようにすること2)1)の指令が、現在行っている事業プロセスに関する経営資源等を最適化するためのものであること※「経営資源等の最適化」とは、「設備、技術、個人の有する知識及び技能等を含む事業活動に活用される資源等の最適な配分等」をいいます。 ◆手続きについて 中小企業・小規模事業者等は事業分野指針に沿って「経営力向上計画」を作成し、国の認定を受けることにより、税制や金融支援等の支援を受けることができます。

《コラム》令和3年度キャリアアップ助成金

◆正社員化コースとは キャリアアップ助成金正社員化コースは雇用されてから6か月以上3年未満の有期雇用契約社員を正社員に転換し、転換後の賃金を転換前の賃金よりアップすることで申請ができます。受給額は中小企業で1人57万円(生産性向上要件に該当したときは72万円)です。 対象となる有期契約社員の主な条件は、①正社員転換後は雇用保険に加入していること②社会保険に加入していること(強制加入被保険者の場合)③事業主又は取締役の3親等以内の親族以外であること ◆令和3年度の3つの変更点(1)正社員への転換時の賃金アップ率が「5%以上」から「3%以上」へ引下げ キャリアアップ助成金正社員化コースは正社員転換後の6か月間の賃金総額が転換前直近6か月間の賃金総額から5%以上アップすることが必要でしたが、令和3年4月からの転換については3%以上のアップでよくなりました。率が引き下げられたので転換時のハードルが少し低くなりました。 (2)賃金総額に賞与は不算入 従来、賃金アップの総額には正社員期間に支給された賞与も加算することが可能でしたが、4月以降の転換では認められなくなりました。したがって基本給とその他の固定的手当で3%以上の賃金アップが必要になります。 3%アップに含まれない手当は①実費補填、②毎月の状況で変動するもの、③賞与、以上は名称にかかわらず含められません。 代表例としては通勤手当、住宅手当、歩合給、精皆勤手当、無事故手当、食事手当、休日手当、時間外手当、固定残業手当(転換後の賃金の固定残業代を減らしたときは、固定残業代を含めた賃金が3%以上のアップになってないと支給対象外になります) (3)新たに正社員制度を規定し短時間正社員に転換した場合は助成金を加算 フルタイムの正社員を転換したときと助成額は同じですが、新たに短時間正社員制度を設けて転換した場合、1事業所1回のみ中小企業で9万5000円(生産性向上要件該当で12万円)が加算されます。

《コラム》年金繰下げ増額新制度

◆年金繰り下げが今より有利に あまり知られていませんが、2022年4月から年金繰下げの年齢が現在の70歳までから75歳にまで広がります。高齢でも元気な方や働いている方が増えている時代背景もありますが、政策的に年金の受給開始年齢の延長を望んでいるともいえるでしょう。 年金は原則65歳から受給開始。しかし開始年齢を1か月繰り下げるごとに0.7%増額されます。現在は70歳まで繰り下げられますが、22年4月から75歳まで選択肢が広がります。70歳から受け取れば42%、75歳から受け取れば84%の増額です。 ◆受給の仕方 繰下げを事前に決める必要はなく、受給開始の請求をしなければ自動的に繰下げ状態になります。必要な年齢になったら請求します。繰下げ後の受け取り方は通常のフル増額ならば、繰下げ月数の増加率で請求時点より受給開始。一括受給は65歳以降で5年の時効にかからない期間の分を遡り一度に受給。その後は65歳時点の年金額を受給します。健康に自信がなくなったときや多額の資金が必要な場合は使いやすいでしょう。 ◆新制度の変更点 それでは新制度の75歳まで選択肢が広がったときはどうなるか、75歳を過ぎて請求すると75歳で請求したとみなします。例えば77歳で請求したら75歳で請求した10年分84%の増額分は、75歳以降の2年分をまとめて受けその後毎月同額受給します。 大きな変更点は一括受給です。23年4月からは70歳の誕生日から80歳の誕生日の前々日までの請求なら5年前に請求があったとみなし、5年前の時点の増額率で5年分を一括受給します。その後は同額を毎月受け取ります。5年超の期間は毎月の受給額に反映してくるので時効消滅がなくなり有利です。ただし80歳の誕生日の前日以降の請求は5年の時効がかかります。 繰下げ受給をすることは各人の事情や考え方の選択です。年金は長生きに備えるものですので「70歳以降は一括受給でも増額される」という変更点は知っておきたいですね。新制度の適用は22年4月に70歳以下の方で、請求は23年4月以降にすると新制度が適用されます。

《コラム》令和3年分からふるさと納税の申告手続簡素化

◆ふるさと納税の確定申告が簡単になる? 個人の所得・控除によって決まる控除上限金額までの寄附なら、自己負担が2,000円で返礼品が貰えるふるさと納税制度。令和元年度の寄附件数は約2,334万件、寄附総額は約4,875億円となり、すでに市民権を得た制度となっている印象です。 寄附によって後から税金が減る形になりますが、寄附をしただけでは税金が減りません。確定申告をするか、自治体5か所以内への寄附かつ他に確定申告をする必要のない方が利用できる、ワンストップ特例の申請をしなければなりません。給与収入のみの方であれば、電子申告を利用すると作成の手間もあまりなく、提出も自宅等で行えるため、確定申告はかなり簡単ですが、令和3年分の申告からは「寄附金控除に関する証明書」の発行により、さらに簡素化される見込みです。 ◆先行して生命保険料控除がやっている制度 ふるさと納税を扱っている特定事業者が発行する年間寄附額を記載した「寄附金控除に関する証明書」は、電子データや郵送等で寄附を行った方に提供されます。寄附を行った方は、証明書のデータを市販の確定申告作成ソフトや国税庁の確定申告作成コーナーで読み込ませることで、今まで1つずつ寄附先や寄附金額を入力していた手間が省けます。令和2年分の申告や年末調整で導入された、生命保険料の控除証明書等の電子的交付と同じ仕組みです。 また、e-Taxではなく、紙の申告書を提出する場合でも、今までは寄附金受領書をすべて提出していたものが、証明書データを国税庁が提供するQRコード付証明書等作成システムで読み込むことによって生成される書類を添付する方法を取ることができますので、こちらも簡素化が可能です。 ◆特定事業者認定に注意 「寄附金控除に関する証明書」を発行することのできる特定事業者は、地方公共団体と特定寄附金の仲介に関する契約を締結している事業者となり、ふるさと納税でよく聞くポータルサイトを運営している団体となりますが、規模の小さい団体は、まだ特定事業者として確認できないものもあります。簡素化制度を使いたい場合は、お使いのサイトが特定事業者に認定されているか確認しましょう。

《コラム》免税駐車場事業者のインボイス対応

 令和5年10月1日に導入される消費税インボイス制度(適格請求書等保存方式)。今年(令和3年)10月1日からインボイス発行事業者登録申請書の受付が始まります。消費税の免税駐車場事業者の対処方法は? ◆免税事業者への影響 課税事業者は、仕入先からインボイス(適格請求書)の交付を受けて仕入税額控除を行います。一方、免税事業者はインボイスを交付できないため、相手先は仕入税額控除できず(6年間は経過措置あり)、契約が打ち切られるかもしれません。 駐車場オーナーは、免税事業者のまま益税となっていた消費税分の値引きに応じるか、又は課税事業者を選択して登録事業者になるかの検討をすることになります。 ◆登録事業者になる選択 課税事業者を選択し、あわせて簡易課税を選択した場合、不動産業のみなし仕入率40%が実際の仕入率より高ければ益税部分の一部は手許に残ります。また多額の設備投資を予定する場合は、原則課税を選択して消費税の還付を受けることもできます。 なお、毎月、振替や振込で賃料が支払われる場合、都度インボイスを交付する必要はなく、登録番号の記載された賃貸借契約書を保管し、預金通帳で支払記録を確認できれば仕入税額控除できるとされています。 ◆登録申請は令和5年3月31日までに! 令和5年10月1日よりインボイス発行事業者となるためには、原則として令和5年3月31日までに登録申請が必要です。なお、令和5年10月1日の属する課税期間中に登録を受ける場合は、消費税課税事業者選択届出書を提出する必要はなく、さらに簡易課税を併せて選択する場合は、令和5年10月1日の属する課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば、令和5年9月30日までは免税事業者、令和5年10月1日からは簡易課税事業者となれます。 ◆免税事業者にとどまる選択 借主が個人消費者の場合、仕入税額控除の必要はないため、インボイスを交付せず免税事業者にとどまることでも問題はないものと思われます。消費税は表立って請求できなくなりますが、令和3年4月1日から再開された総額表示のもとでは、賃料は消費税を含む総額で表示されるため、立地や広さで周辺の駐車場と比べ競争力があれば、従前の税込賃料と同様の水準で料金設定することもできるのではないでしょうか。

《コラム》事業承継の現状とコロナ禍の影響

◆日本商工会議所アンケートより 昨年8月に日本商工会議所が全国会員企業14,221件を対象に行った「事業承継と事業再編・統合の実態に関するアンケート」(回答4,140件)により、事業承継について次のように実態がまとまりました。 事業承継を軸にコロナ禍の影響がどう出ているのか尋ねる内容となりました。 会員企業の後継者の決定状況は「経営者年齢が60歳以上の企業」で約半数が決定済みの一方、後継者不在の企業が2割を占めています。同族経営が8割と多数を占めるものの中小企業で親族外承継も徐々に増加しており、2000年代は約1割、2010年以降では約2割となりました。 この調査では、事業承継の時期について、コロナ禍の影響で売上げが減少している企業ほど事業承継予定時期を後ろ倒しにする傾向があることがわかりました。また、経営者の在任期間別の利益状況を見ると「社長就任後10年未満の企業」の6割の企業がコロナ禍においても直近期黒字の一方で、「社長就任後30年以上の企業」はコロナ禍を受けて赤字を見込む割合が大きく、事業承継によって経営を活性化している企業がコロナ禍においても業績を上げている傾向があることがわかります。 ◆事業承継の問題点 事業承継の問題点は「後継者への株の譲渡」が最も多く3割を占めています。課題・障害は「譲渡側は譲渡の際の相続税、贈与税が高い、後継者側は買取資金がない」と税制面と資金面問題で6割~7割を占めています。 ◆事業再編・統合(M&A) M&Aにおいては「過去に買収を実施・検討した企業」は約15%、それを「売上高10億円超の企業」に絞ると「買収を実施・検討した企業」は約4割を占めています。 買収先は後継者難が深刻化している小規模企業(従業員20名以下)が約7割を占めており、M&Aが後継者不在企業の事業継続の受け皿となっていることがわかります。買収目的は「売上・市場の拡大」7割、「事業エリアの拡大」4割が多く、目的、期待効果の達成度も約半数が「達した」とする等、中小企業の事業拡大にM&Aが功を奏していることがうかがえます。

《コラム》自社株買収M&A

◆会社法に新たな組織再編制度が創設された 会社法制の改正が2019年12月4日に成立し、同12月11日に公布され、本年3月1日に施行されました。この改正法で「株式交付」という新しい制度が創設されました。改正会社法により創設された「株式交付制度」とは、合併、分割、株式交換、株式移転という組織再編制度の新たな一種で、他の会社を子会社にするために株式を取得し、その対価として自社の株式を交付する制度です。 株式交換が100%の完全子会社化を目的とするのとは異なり、株式交付の目的は、議決権の50%超保有の子会社化です。 この株式交付制度の利用で、大規模な買収の実現、資金が潤沢でない企業による買収の増加、自己株式の有益な処理方法、等々M&Aの振興の期待が高いところです。 ◆既存の自社株対価M&A 2018年の産業競争力強化法の改正を受けて、措置法には、買収に応じた株主が対価として買収会社株式を取得した場合、その株式を売却しない間の課税は繰り延べられるとの制度が設けられていました。 ただし、その前提として、企業買収が生産性向上につながることなどを示す事業再編計画の認定を受けた認定特別事業再編事業者に該当する必要がありました。 今年の税制改正では、この制度に係る条文から事前認定に係る文言が消えました。 ◆税制への株式交付制度の取込み 文言消滅は、課税繰り延べの税法条規の前提が、産業競争力強化法ではなく、改正会社法の株式交付制度に移ったからです。 株式交付制度の適用があったら、それにより取得した株式については、その株式を売却するまでは、課税が繰り延べられるとの制度に衣替えしたわけです。 また、改正税法では、子会社化のための株式交付に際し、現金での株式買収が併用されていても、買収額の2割未満なら、課税繰り延べ税制適格の株式交付に該当するとしています。 なお、会社法としては、株式交付は、組織再編制度の一つなので、他の制度同様、株式交付計画の策定、株主総会の特別決議、債権者保護手続き、等々の規定を置いていますが、税法は、株式交付制度に対して、他の組織再編制度のように法人税法本法に取り込むのではなく、措置法の中に規定を置いたままにしています。

《コラム》住民税と所得税の異なる課税方式選択手続が簡素化

◆異なる課税方式の選択が可 上場株式等の配当所得の課税方式には、①総合課税、②申告分離課税、③申告不要制度があります。この課税方式の選択における所得税と個人住民税での関係について、平成29年度の地方税法の改正で、解釈の確認と言える規定が設けられました。すなわち、上場株式等の配当所得や源泉徴収選択口座内の譲渡所得等について、所得税と個人住民税とで異なる課税方式を選択できることが明確化されました。 ◆所得税と住民税の様式の不整合 しかし、所得税の確定申告書の住民税に係る記載欄には、住民税での課税方式の選択欄がありません。従って、所得税と住民税で、異なる課税方式を選択する場合には、個人住民税納税通知書送達日(5月下旬頃)前に、所得税とは異なる課税方式選択の旨を伝える申告書等の提出が必要でした。 ◆有利不利の目安 課税総所得金額が1000万円以下の場合(上場株式等の譲渡損失なし)であれば、所得税では総合課税、個人住民税では申告分離課税又は申告不要制度を選択するパターンが一般的には有利です。 ちなみに、後期高齢者保険料や国民健康保険料の負担も、個人住民税に係る申告による所得をその料額計算の基礎としていますので、課税方式の選択の効果はここにも及びます。 ◆日税連の税制建議と今年の税制改正 なお、平成の終わり頃、この課税方式選択に係る住民税額や保険料額の長期に亘る決定誤りがあったと公表する自治体が続出していました。これを承けて、日本税理士会連合会は2019年7月22日提出の「税制改正建議書」の中で、「上場株式等の配当所得等に関し、個人住民税において所得税と異なる課税方式を選択する場合の申告手続を簡素化すること」を申し入れていました。 今年の税制改正大綱では、個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の全部について源泉分離課税(申告不要)とする場合に、原則として、確定申告書の提出のみで申告手続が完結できるよう、確定申告書における個人住民税に係る附記事項を追加する、とされ、税理士会の要望が実現しています。 令和3年分からの所得税の確定申告書作成では、住民税欄の附記事項記載に要注意です。

《コラム》日本経済の救世主になれるかM&A促進税制

◆政府がM&Aに熱い視線 経済産業省は、1年ほど前に公開した「中小M&Aガイドライン」でM&Aの後押しをする姿勢を鮮明にしています。 「中小M&Aガイドライン」によると、2025年までに、平均引退年齢の70歳を超える中小企業の経営者が約245万人おり、うち半数の約127万人が後継者未定とのことです。 廃業による経営資源の散逸が積み重なることにより、優良な経営資源が活用されないまま喪失されてしまうことは、日本経済の発展にとって大きな損失との認識で、M&Aの普及がその対策として有効な切り札であり、生産性の向上にも資するとしています。そして、10年で60万、年平均10万のM&A契約を成就するとの計画を立てています。 ◆計画実現のために役割喚起 そのため、売り手・買い手を繋ぐM&A専門業者の活性化を期待するとともに、商工団体、金融機関、弁護士・公認会計士・税理士といった各分野の専門家に向けても、それぞれの分野別にM&A支援として期待される役割や留意点などを提示しています。 M&A業界は、30年ほどの歴史の新興産業で、現在の専門業者数は300社程度とのことです。日税連もホームページでM&Aのマッチングをすすめています。 ◆切り札としてのM&A促進税制 令和3年度税制改正の中に、M&A促進税制が二つあります。1.株式交付M&Aでの譲渡益繰延制度2.M&A投資リスクに備えるための株式取得価額の70%損金算入制度 株式交付の場合の譲渡益繰延制度創設は、2019年中に経産省が改正要望事項としてあげていたものですが、会社法の株式交付制度創設の施行予定が2021年3月1日となっていたので、1年遅れでの立法となりました。これは、売り手側への優遇税制です。 もう一つの優遇税制は、買い手側に対するものです。 M&A対価の70%損金算入の新制度の要件は次の内容です。・青色申告中小企業者が対象・経営力向上計画による取得・株式の取得価額10億円以下・投資損失準備金の計上・6~10年経過時準備金の取崩し・中小経営強化法改正が前提・令和6年3月31日まで適用

《コラム》労災保険特別加入の対象拡大

◆新たに3業種が追加 労災保険は事業に雇用されている労働者の業務上のけがや傷病を補償するものですが、災害発生状況の多い個人事業主に対しても加入が認められている特別加入制度があります。現在は中小企業事業主、建設業の一人親方、農林漁業の従事者、海外派遣者、個人タクシー業者、個人貨物運送業者等が特別加入の対象者ですが、4月1日より対象範囲が拡大されることになりました。 ◆新たに対象となる業種①芸能従事者……テレビや映画、舞台の俳優・監督・演出家・スタッフ・音楽家等。芸能従事者は業務上のけがや事故が多いことから特別加入の対象になることを強く希望していました。長年の議論によって認められることとなりました。②アニメ―ション制作従事者(アニメーター)……時代とともにアニメーション制作も増え、雇用されていない制作者が多くいることから対象となりました。③柔道整復師 厚労省ではこれら3業種の就労者は約29万人いるとみて、約1万5000人の加入を想定しているとのことです。 ◆創業支援等措置の高齢者も加入可能に 労災保険の特別加入の対象拡大は4月1日施行の高年齢雇用安定法改正(70歳までの雇用努力義務)によって新設された創業支援等措置の対象者にも適用されることになりました。 創業支援等措置は65歳から70歳までの労働者の就業機会を確保するための高齢者就業確保措置の1つで、雇用にはよらないため業務委託契約を締結する必要があります。企業側も措置の実施に関する計画書の作成、労働者代表者との同意が必要になります。 ◆特別加入をするには 労災保険の特別加入はそれぞれの業種の特別加入団体(中小企業は事務処理を委託する労働保険事務組合)を通じて所轄の労働基準監督署に手続きを行うことで補償を受けることができます。新しい業種の加入希望者は既存の団体に加入するか、新たに特別加入団体を設立することになります。