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《コラム》一括償却資産の損金(必要経費)算入のタイミング

◆一括償却資産とは パソコンなどの器具及び備品その他減価償却資産を取得した際に、取得価額が30万円未満の少額である場合には、法定耐用年数より短い期間で損金(法人税)・必要経費(所得税)(以下、“経費”とします)にできる規定があります。(1)10万円未満の場合は消耗品等として取得時に全額経費となります。(2)10万円以上20万円未満の場合は、一括償却資産として3年間の定額償却にできます。※下記(3)の選択も可能です。(3)10万円以上30万円未満の場合は、300万円を限度として全額経費にできます。ただし、これは中小企業等のみに適用です。 取得価額10万円以上20万円未満の資産で耐用年数よりも短い期間で経費にできるのが「一括償却資産」です。この制度は中小企業等以外の法人も使えます。金額の上限もありません。 ◆一括償却資産のメリットとデメリット 一括償却資産のメリットは、3年での定額償却ですので、個々の資産の本来の法定耐用年数の確認をする必要がなくなります。また、本来の耐用年数よりも早く経費にすることができます。さらに、一括償却資産は償却資産税の申告対象から外れますので固定資産税が掛かりません。 一方のデメリットとしては、3年の償却期間中に資産を滅失・譲渡した場合でも、未償却額残高を損金算入することができないことがあります。すなわち、減価償却を打ち切れないため、帳簿からその資産を取り除く処理ができません。 ◆途中で売却や除却をしても償却期間は3年 資産を売却したり除却した場合には、通常は、その資産の帳簿価額(=取得価額からそれまでの減価償却費を控除した残額)を売却原価もしくは除却損として計上します。しかしながら、一括償却資産としたものに対してこの処理をするのは間違いとなります。その資産がなくなったとしても会社の帳簿上には未償却の残額が残り、あくまでも36か月(3年)かけて経費にすることになります。 ただし、会社が解散して清算に入り、残余財産が確定した場合には、残余財産の確定の日の属する事業年度終了の時における一括償却資産の金額が事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとなります。残余財産が確定するとその先はありませんから3年縛りは適用されません。

《コラム》相続税法第58条の改正

◆相続税法第58条通知 相続税法第58条に、市町村長等は、死亡届書を受理した場合、翌月末までに所轄の税務署長に届書記載事項を通知しなければならないとの義務が定められています。 この条文が今年改正されました。死亡届事項の通知義務者が法務大臣に、通知先が国税庁長官に変わり、市区町村長の通知義務の対象が、当該死亡者所有土地・家屋に係る固定資産課税台帳の登録事項に変わりました。通知期限は同じです。 この改正の施行期日は、令和6年3月1日又は改正戸籍法施行日(令和6年5月31日までの日)のいずれか遅い日です。 ◆改正戸籍法とは 改正戸籍法というのは、デジタル戸籍の作成の主体を市区町村から、戸籍事務機関委任の委託元の法務省に移し、市区町村長は、届書・申請書等の戸籍記載に必要なものを受理した場合に、当該届書等を電子化画像情報にして法務大臣に送信し、法務大臣は、その画像情報を基に磁気ディスクに記録する、というものです。 その結果、税務サイドへの通知の主体が市区町村長から法務大臣に変わる事になり、それに対応して通知先も、所轄税務署長から国税庁長官に変わったわけです。 ◆デジタル・ガバメント また、法務大臣からの通知は、デジタル戸籍が前提であり、これはそもそも、デジタル・ガバメント推進の国家戦略の一環としての施策なので、オンラインでの通知が必然となりますが、市区町村からの通知は、従来の通知義務履行と同じく書面での通知も可能なようです。 ◆固定資産課税台帳の登録事項の通知 市区町村長から所轄税務署長への通知の対象の、土地・家屋に係る固定資産課税台帳の登録事項については、今年の税制改正で新たに加わったものです。ただし、財務省HPの改正税法の解説には、既に事実として「その通知に係る被相続人の所有していた固定資産課税台帳に登録されている土地、家屋及び償却資産等に関する資料を併せて送付することとなっていました」と書かれています。そう出来る根拠は示されていませんので、今年の改正で、正式に法定化する事で、グレーの解消にしたのかもしれません。

《コラム》令和4年度地域別最低賃金

◆47都道府県で30円~33円の引き上げ 令和4年地域別最低賃金改定額が中央最低賃金審議会で取りまとめられ公表されました。各都道府県労働局長の決定により10月1日より順次発令されます。 地域別最低賃金は全国整合性を図るため目安額のランクを設けていますが、改定額を見て行くとAからDの47都道府県すべてが30円以上引き上げられ東京都は時給1,072円と最高です。 最高額1,072円と最低額853円の金額差は219円です。低水準の地域の上げ幅が高まり差は少し縮まりました。 ◆引き上げ額全国加重平均31円過去最高 近年最低賃金は引き上げの流れが続いていていましたが、新型コロナウィルス禍からの経済再開が本格化し、各地で人手を求める動きが強まっています。賃金水準が高い地域に隣接する地域では、労働力の流出を抑えるための賃上げに動きます。さらに物価上昇も上乗せを後押しします。ただし最低賃金を上乗せしても物価高で手取りはあまり増えないという意見もあります。 今後もデジタル活用、省力化等生産性向上に労使が努めることで賃上げは実現するのでしょう。 ◆令和4年度の改定額は以下の通り・30円改定宮城 883円 福島 858円 群馬 895円石川 891円 福井 888円 岐阜 910円奈良 896円 岡山 892円 和歌山 889円香川 878円 福岡 900円・31円改定東京 1072円 大阪 1023円 愛知 986円千葉 984円 神奈川 1071円 埼玉 987円北海道 920円 青森 853円 秋田 853円栃木 913円 新潟 890円 富山 908円長野 908円 静岡 944円 三重 933円滋賀 927円 京都 968円 広島 930円山口 888円 徳島 855円・32円改定山形 854円 茨城 911円 山梨 898円兵庫 960円 愛媛 853円 佐賀 853円長崎 853円 熊本 853円 宮崎 853円大分 854円 鹿児島 853円・33円改定岩手 854円 鳥取 854円 島根 857円高知 853円 沖縄 853円

《コラム》令和4年分申告書等作成コーナー新機能

◆今年も早々に新機能を紹介 国税庁のホームページで毎年刷新される確定申告書等作成コーナー。毎年新しい機能を早めに紹介して、利用を促進しています。今年の発表は8月にありましたので、内容を確認してみましょう。 ◆スマホで青色申告決算書等が入力可能に 令和5年1月から、青色申告決算書・収支内訳書がスマホで作成可能になります。また、パソコン画面も使いやすいようにリニューアルされる予定です。 会計ソフトでもスマホ対応をしているものもあり、すでに経理や決算をスマホで行っている、という方もいらっしゃるはずです。PCで入力した方が早いという方も多いかもしれませんが、フリック入力等を極めたスマホユーザーには嬉しい変更ではないでしょうか。 ◆マイナンバーカードの読み取り回数減 現行は①e-Tax登録情報確認 ②電子署名の付与 ③e-Taxへのログイン、と3回のマイナンバーカードの読み取りが必要だったものが、過去にマイナンバーカード方式で申告された方についてはe-Taxへのログインの1回読み取りのみで済むようになります。 ◆マイナポータル連携による自動入力拡大 マイナポータル連携は、マイナポータル経由で控除証明書等の必要書類データを一括取得し、各申告書の該当項目へ自動入力する機能です。すでにふるさと納税の寄附金控除や、生命保険、地震保険等の控除内容はマイナポータル連携が可能でしたが、令和5年1月以降は1年間分の医療費や公的年金等の源泉徴収票、国民年金保険料もマイナポータル連携の対象となる予定です。 ただし、医療費については健康保険の医療費通知情報から連携が行われるので、自由診療やドラックストアで購入した薬の費用は対象とはなりませんから、注意が必要です。 マイナポータル連携については今後も順次拡大をしてゆく予定で、給与所得の源泉徴収票やiDeCo、小規模企業共済等掛金も自動入力できるようになるとのことです。

《コラム》産後パパ育休と育児休業分割取得

◆10月から産後パパ育休制度が創設 新たに創設される「産後パパ育休(出生時育児休業)」は通常の育児休業とは別で、原則休業の2週間前までに会社に申し出れば出生後8週間以内に4週間までの休暇を取得できます。初めに申し込んでおくと2回分割もできます。 産後パパ育休の期間中は原則就業しないことになりますが、労使協定を締結すると休業中の就業も可能になります。手続きについては書面で行いますが厚労省のホームページに様式が掲載されています。 ◆10月から育児休業2回分割でも取得可能に 育児休業は子が1歳になるまで分割して2回取得することが可能になりました。原則3回目以降はありませんが、1歳以降でも例外事由に該当すれば再取得ができるようになっています。1歳以降の育児休業の延長ではその開始日は柔軟な設定になります。 ◆10月から育児休業給付金も変わります 新設された産後パパ育休に対する期間は「出生時育児休業給付金」が申請できます。産後パパ育児休業中に労使協定があれば就業も可能ですが10日を超えて勤務すると給付金は出なくなりますのでご注意ください(10日を超える場合は就業時間数が80時間以下)。給付額は休業開始時賃金日額(育休開始前6か月の賃金を180で除した額)×67%(半年経過後は50%支給)。 ◆社会保険料免除の条件が変わります 育児休業中の保険料免除の要件は「その月の末日が育児休業中である場合」ですが10月からそれに加えて次の条件が付きます。・その月の末日に育児休業中でなくとも同一月内で14日以上の休業の場合・「賞与に係る保険料」は連続して1か月を超える育児休業を取得した場合に限り保険料免除とされました。個人負担保険料減額分と給付金を合わせると賃金手取りの8割ほどがカバーされると言います。 今回の改正により分割で短期間の取得や夫婦間で取得時期をずらして育休を交代するなど柔軟な働き方、休み方ができるようになります。厚労省調査によると育児休業を希望していたが取得できなかったとする男性労働者が3割いたということです。制度面だけでなく社内の意識も柔軟に変えていく時かもしれません。

《コラム》相続から3年以内の遺産分割

 遺産分割協議が長引いても、相続税の申告期限から3年以内に分割された場合は、小規模宅地等の課税価格の特例や配偶者の税額軽減の特例を受けることができます。 ◆3年以内の分割見込書の提出 特例を受けるには、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに遺産分割を行う必要があります。 ただし、未分割の場合でも、申告期限から3年以内に分割見込みがあるときは、特例の適用がない状態で相続税の申告書を作成し、申告書と一緒に「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出します。 申告期限から3年以内に遺産分割が終了したときは、特例の適用を受けて、分割が行われた日の翌日から4か月以内に更正の請求を行うことができます。 ◆やむを得ない理由がある場合の承認申請書 なお、申告期限後3年を経過する日に、裁判や調停など、やむを得ない事情により分割未了のときは、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出して承認を受けます。判決確定等を受けて4か月以内に分割されたときも更正の請求ができます。 ◆土地の遺産分割協議日に注意! 相続税の申告期限から3年以内に、土地の遺産分割を行い、遺産分割協議書を作成して相続登記したものの、預金など他の財産の遺産分割協議が長引き、遺産全部についての分割が終了してから更正の請求をした場合、土地の遺産分割協議書作成日から4か月以内に更正の請求をしていないときは、小規模宅地の特例を受けることができなくなりますので注意しましょう。 ◆遺産分割は相続開始後10年までに 所有者不明土地の発生を予防するために、改正民法では、令和5年4月より遺産分割未了のまま相続開始から10年経過したときは、画一的な法定相続分で遺産分割されることになりました。 また、令和6年4月より不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請が義務化されます。ただし、遺産分割未了の場合でも相続人申告登記を行い、登記名義人の法定相続人である旨を申し出ることで申請義務を履行したものとされます。これらの措置は、施行日前の相続にも適用されますので、早い機会に遺産分割協議を進めることをお勧めします。

《コラム》年金の種類と所得金額計算

◆たくさんの「年金」、どれを使ってますか? 近年、老後資金への関心から、iDeCo(個人型確定拠出年金)等の私的年金の流行が起こりました。「年金」といっても、数多くの種類があり、混同しがちです。所得金額算出の観点から分けて確認してみましょう。 ◆公的年金等控除が適用される年金 公的年金等は、年金の収入金額から「公的年金等控除額」を差し引いて所得金額を計算します。この雑所得となる公的年金は、①国民年金法、厚生年金保険法、公務員等の共済組合法などの規定による年金②過去の勤務により会社などから支払われる年金③外国の法令に基づく保険または共済に関する制度で①に掲げる法律の規定による社会保険または共済制度に類するものと規定されています。 「公的」と名がついているので企業年金は異なると思う方もいらっしゃるかもしれませんが、企業年金も年払いで受け取る場合は、公的年金等控除が適用される年金です。 公的年金等控除が適用される年金を例示すると、基礎(国民)年金・厚生年金・企業年金・国民年金基金・確定拠出年金等です。ただし、企業型確定拠出年金やiDeCo、一部の企業年金等は、「年金として受け取る(公的年金等控除適用)」か「退職所得として一時金で受け取る(退職所得控除適用)」かの選択が可能です。税額や健康保険料に鑑みると有利不利があるので、他の退職金や年金の有無、その他の収入見込みやライフプランを考慮する必要があります。 ◆非課税の年金 病気やケガで障害が残った場合などに支給される「障害年金」や、国民年金・厚生年金の被保険者が亡くなった場合に、その人に生計を維持されていた人に支払われる「遺族年金」は非課税所得です。 ◆公的年金等控除が適用されない年金 個人年金保険の年金については、公的年金等控除が適用されません。所得区分は公的年金と同じ「雑所得」ですが、確定申告書上で記載すべき欄は「公的年金等」ではなく「その他」の雑所得となります。 個人年金の所得金額は、その年に受け取った金額から積み立てた額を引いた額です。

《コラム》交際費と社内飲食費

◆交際費制度はそのまま延長 令和4年度税制改正で、交際費の損金不算入制度および接待飲食費に係る特例については令和2年度の改正内容を踏襲し、そのまま2年間延長することとなりました。 ①支出する交際費等の額のうち接待飲食費(1人当たり5,000円を超える分)の額の50%相当額は損金算入②資本金又は出資金の額が1億円以下の中小企業は支出する交際費の額のうち年800万円までは損金算入※中小企業はどちらかを選択適用 「①について、資本金の額等が100億円を超える法人を除外」も据え置きです。 ◆飲食費は社内・社外で対応が異なる 資本金1億円超の企業であっても、社外への接待飲食費については1人当たり5,000円以下の飲食であれば税務上交際費に含めず、全額を損金にできます。また、自社の役員・従業員・親族に対する接待等のために支出するものは、5,000円以下であっても交際費に該当します。ただし、社内の「(参加の可否はともかく)社員全員を対象とした忘年会等」の飲食費については、社会通念上妥当な金額であれば、福利厚生費として扱います。 「社内飲食費」なのかが微妙な判定も、国税庁のQ&Aで例示されています。親会社の役員や、グループ内の他社の役員等に対する飲食費、同業者同士の懇親会等で支出する自己負担分の飲食費については、「社内飲食費」には該当しません。こういった場合は1人当たり5,000円以下であれば税務上交際費には該当せず、全額損金算入が可能です。 ◆では、出向者の飲食費はどうなる? 出向者の場合は、その出向者が出向先法人の立場で飲食等の場に出席したか、出向元法人の立場で出席したかにより、判断することになります。 例えば、親会社からの出向者が出向先の子会社の役員等を接待する会合に、子会社の役員等の立場で出席しているような場合に支払う飲食代は、「社内飲食費」には該当しません。他方、出向者が親会社の懇親会の席に、あくまで親会社の社員等の立場で出席しているような場合に支払う飲食代は、社内飲食費に該当することとなります。

《コラム》令和4年10月改正 キャリアアップ助成金

◆正社員化コースに大きな変更点があります この助成金は9年前に創設された助成金です。今まで正社員化コースを申請していた企業が昨年までと同様に支給申請しても審査で通らず、不支給となる事態が発生しそうです。十分ご注意ください。 ◆令和4年10月1日以降の転換に適用①大きな変更点は、転換対象となる正社員の条件が厳しくなります。・現行……同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている社員・改正後……上記社員のうち「賞与又は退職金の制度」かつ昇給が適用されている社員 今までは、正社員に転換した後の労働条件通知書で「賞与」「昇給」が「有」となっていなくても助成金は支給されていました。 しかし令和4年10月1日以降に転換される正社員については「賞与又は退職金」かつ「昇給」が労働条件通知書で「有」になっていないと助成金は支給されません。就業規則にもいつ支給するのか明示されている必要があります。 「賞与」と「退職金」の両方ない会社が「退職金を新設するのは資金繰り上難しいと思われますので、「賞与」「昇給」の組み合わせを選択される企業が多いと予想されます。 ②非正規雇用社員の定義が変更されます。・現行……6か月以上雇用している有期又は無期雇用社員・改正後……賃金の額又は計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則」の適用を6か月以上受けて雇用している有期又は無期雇用社員 今までは非正規社員の定義があいまいであったので、転換前6か月の有期雇用社員又は無期雇用社員の間に「正社員とは異なる雇用区分」の就業規則等が適用されていることが転換の条件になりました。したがって令和4年10月1日以降に正社員に転換する場合、令和4年4月1日から「正社員と異なる雇用区分の就業規則」の適用を受けている必要があります。ここを正社員と同じ雇用区分の就業規則を適用すると不支給になる可能性があります。対策として正社員用と別に非正規社員用の就業規則を作成しそれが正社員とは異なる雇用区分であるとしておくことです。もちろん2つに分けるだけでなく両者の違いが判る賃金体系にする等の変更が必要になります。

《コラム》退職日を月末にしない場合の損得と留意点

◆社会保険の資格喪失日 社会保険で被保険者の資格を喪失する日は、原則、その事実があった日(「退職日」)の翌日となります。 会社や社会保険適用の個人事業所の従業員・役員が退職する場合、退職日が月末であれば、その月まで社会保険が課されます。給料からの社会保険料の控除を翌月としている場合は、退職月には2か月分の控除となりますので、給与計算では留意が必要です。 ◆社会保険料vs国民健康保険料・国民年金 社会保険の資格を喪失した場合、自身で住所地のある市区役所に出向き、社会保険から国民健康保険・国民年金への切り替え手続をしなければなりません。この切り替えを失念すると、健康保険が適用されず、その月は全額自己負担となってしまいます。 仮に月末の一日前に社会保険を喪失させた場合でも、その月の初日から適用されないこととなりますので、その月の退職日までに病院にかかった分は全額自己負担となってしまいます。 なお、国保への切り替えをしなかった場合で、「健康で病気もしなかったから1か月健康保険に入らないで得した」と短絡的に考えるもの禁物です。空白期間に、国民年金、国民健康保険の切り替え手続をしないと、未納期間がひと月発生することとなり督促の対象となります。そうすると、障害年金の受給要件を今後1年間満たさなくなります。万一の際に障害年金の受給ができなくなりますので、空白期間のないように、国民年金、国民健康保険の手続をおこなうことです。 ◆退職日は総合的に長い目で考えて決める 社会保険の方が、国民健康保険・国民年金に比して、概して負担が高額です。そのため、月末の前日に退職してその月に社会保険が掛からないようにするとお得と考える方もいらっしゃいます。しかしながら、社会保険料は月々の負担が高額な分、将来もらえる年金の額も国民年金に比して高い金額となっています。 また、社会保険は、本人と会社でほぼ50%ずつでの負担ですし、配偶者が第3号被保険者であれば基礎年金部分も社会保険なら支払っていることになっています。国民年金負担となれば、配偶者の分も1人分の国民年金保険料の負担が発生します。 短絡的に目の前の低い負担の方を選んでしまうことなく、よくよく考えて決めることです。