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《コラム》今年の改正税法 完全子法人株式配当の源泉税

◆会計検査院は税制改正を促す為に検査 会計検査院の指摘があったので、税制改正をしました、という事例が増えています。 会計検査院は、平成29年度から令和元年度に完全子法人株式等又は関連法人株式等を保有している1667社を検査対象法人とし、そのうち、完全子法人株式等又は関連法人株式等に係る受取配当等に対する源泉所得税相当額について所得税額控除を適用したことにより還付金が生じた法人が1262社あり、それらに支払われた還付金が約8898億6092万円となっており、うち還付加算金が生じていた法人は延べ888法人で、その額は3億6563万円、さらに、うち423社は、源泉徴収した全額が課税対象外の配当金に係るものだった、と記していました。 ◆制度の趣旨に沿ってない逸脱規定 また、完全子法人株式等に係る配当に源泉徴収をしていたことから、企業側に一時的な資金負担をさせた上で、税務署側に於いて源泉所得税の徴収の事務、還付の事務が生じ、その上、還付加算金の事務と実の国庫負担が生じており、これらは、税の効率的かつ確実な徴収の制度趣旨に沿ったものとは言えず、むしろ逸脱ではないかとのニュアンスの指摘をしました。 ◆国税は素直に対処するが問題アリと 会計検査院の指摘は、令和2年11月10日に内閣に送付された「令和元年度決算検査報告」においてなされており、財務省は、令和4年度の税制改正でこれに応じ、完全子法人株式等と3分の1超所有の株式等とに係る配当について所得税課税対象外とし、その支払いをする法人の源泉徴収事務も不要としました。 ただし、令和4年度の改正だけでは、税収減少になるので次の税制改正で対応策を打出す、としています。 ◆税収減対策にどう対処するのか 確かに、この件の令和4年度の改正は、所得税法での改正のみで、法人税法での改正はなされていません。特に、M&Aで、新たに子会社になった場合などでは、源泉所得税額控除の月割計算により不完全還付になる場合がありますので、その分は確かに税収減に繋がります。 財務省には、税収減対策の秘策がありそうです。それは従来制度の原理的変更を伴う大がかりなものなのかもしれません。

《コラム》今年の改正税法 相続登記義務化と登録免許税

◆不動産登記法の改正で相続登記義務化 令和6年4月1日以降になると、不動産登記法の改正(令和3年4月28日公布)により、相続や遺贈により不動産を取得した相続人にとって、相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられることになりました。相続登記の義務化は、施行日前に相続の開始があったものについても、遡って適用されます。義務違反は10万円以下の過料の対象です。 ◆「相続人申告登記」の新設 3年以内に遺産分割が成立しない場合には、相続人が、登記官に対して、所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、自らが相続人である旨を、相続登記の申請義務履行期間内(3年以内)に各人が申し出ることで、相続登記の申請義務は履行したものとみなされ、申し出を受けた登記官は職権登記を行います。これを「相続人申告登記」と言い、この場合の登録免許税は、職権登記の非課税の規定の適用と措置されます。 ただし、この相続人申告登記では、持分割合の記載はなく、仮の報告を記載したものとの扱いなので、所有権主張の根拠にはなりません。また、遺産分割成立から3年以内に遺産分割の内容を踏まえた所有権移転登記の申請をすることも義務とされました。 ◆今年の登録免許税法の改正 なお、次の非課税措置も見直されています。①相続により土地の所有権を取得した個人が相続登記をする前に死亡したときの当該死亡者を当該土地の所有権の登記名義人とするためにする登記の登録免許税(これは適用期限延長の見直し)②不動産の価額が100万円以下の土地であるときの相続による所有権移転登記又は表題部所有者の相続人が受ける所有権保存登記についての登録免許税(この見直しは令和4年4月1日以後の登記から適用) ◆所有者不明土地関連はこれから なお、来年以降に施行とされている所有者不明土地関連の民法・不動産登記法・相続土地国庫帰属法の改正・創設に伴う新たな税制が、来年以降、目白押しで現れて来ると思われます。

《コラム》今年の改正税法 縮減されない住宅ローン控除

◆住宅ローン控除の今年の改正内容 ローン返済の利息の支払額よりも控除額が多い状態、逆ザヤ状態が会計検査院の指摘で問題視されていました。消費税率10%引上げに伴う措置期間も終了でした。 それらへの対応として、控除率が1%から0.7%に減少となり、所得要件も3000万円以下から2000万円以下となり、控除対象年末借入金残高限度額も4000万円から2000万円(新築等で2023年末入居までなら3000万円)に縮減となり、控除期間13年も10年(新築等で令和5年末入居までなら13年)に短縮となりました。 しかし、これらの縮減の例外があります。 ◆非縮減その1 カーボンニュートラル住宅 2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指すため、省エネ性能の高い認定住宅の新築等に限り、住宅ローン控除の借入限度額を、令和5年末入居までなら5000万円(エネルギー消費性能向上住宅については4500万円又は4000万円)に増額、令和7年末入居までだと4500万円(エネルギー消費性能向上住宅については3500万円又は3000万円)に増額、控除期間も13年とされます。 ◆非縮減その2 コロナ税特法 昨年の住宅ローン控除関係の改正税法は、コロナ税特法で立法されています。そこでは、令和3年9月30日までに契約した新築注文住宅、令和3年11月30日までに契約した分譲住宅・中古住宅の取得と増改築等、これらを令和4年12月31日までの間に自己の居住の用に供した場合には、縮減前の昨年の制度がそのまま適用になります。 ◆コロナ税特法の規定が措置法で新設 今年の税制改正大綱の中に、合計所得金額1000万円以下の者に限り床面積要件を40㎡に緩和する、と書かれています。しかし、昨年の税制改正大綱にも、合計所得金額1000万円以下の者については床面積40㎡から50㎡までの住宅も対象とする特例措置を講ずる、と書かれています。 床面積要件の緩和は、既に昨年に措置済みのことなのに、少し変ですね。 これは、昨年は特別にコロナ税特法での措置としたが、今年は通常通りの租税特別措置法での措置として新設立法としたことの意味のようです。ただ、両規定で期間がかぶっているところがあるので、上記の「非縮減その2」が生じているわけです。

《コラム》今年の改正税法 所得税・住民税の課税方式統一

◆配当金を巡る3つの課税方式 上場株式の配当金が支払われる際には、所得税等が源泉徴収されます。復興特別所得税を除き、税率は、20%(所得税15%、住民税5%)です。 上場株式の配当金について総合課税を選択すると、配当控除が適用できます。上場株式の配当金について申告分離課税を選択すると、上場株式等の譲渡損失との損益通算や繰越控除の適用を受けることができます。また、申告不要(源泉分離課税)を選択することもできます。 ◆選択の基準 所得税の累進税率から配当控除率(10%)を引いた差引税率が源泉税率(15%)に満たないのは、23%-10%=13%<15%なので、累進税率23%の適用となる課税所得金額900万円以下の場合、所得税での総合課税選択有利の指標となります。 また、住民税は、10%の一律課税なので、配当控除率2.8%を引いた差引税率は、10%-2.8%=7.2%>5%(特別徴収税率)となり、常に特別徴収税率を超過するので、総合課税の選択は、税負担的に不利です。 それで、所得税では総合課税の選択をし、住民税では、申告不要(源泉分離課税)を選択するのが、有利となります。その上、申告不要の選択で、住民税の合計所得金額が減るので、国民健康保険等の保険料や医療機関における窓口負担額を減らす効果もある、と言われています。 ◆朝令暮改的な今年の改正 昨年の税制改正では、所得税確定申告書の中の記載だけで、所得税と異なる住民税の課税方式選択が完結できるよう、手続の簡素化がなされました。 ところが、このように制度の普及促進をしたばかりなのに、今年の改正では、異なる課税方式選択可能制度を廃止し、所得税と住民税との課税方式を一致させることにしました。この改正は、令和6年度分以後の個人住民税について適用です。 そうすると、令和5年分からの所得税確定申告では、所得税と住民税の両方の税負担合計を計算して、総合課税(配当控除)と申告不要(源泉分離)との選択をすることになります。徴収税率20%と比較すると、(23%+10%)-(10%+2.8%)=20.2%(20%+10%)-(10%+2.8%)=17.2%となるので、総合課税選択は、累進税率20%の適用となる課税所得金額695万円以下の場合ということになります。

《コラム》換価分割の課税

 実家の土地を相続したものの、相続人には持ち家がある場合、たとえ家族の思い出が詰まった懐かしい家であっても、取り壊して売却せざるを得なくなることがあります。このようなとき、土地の売却代金を相続人の間で分ける換価分割が行われます。 ◆相続税と譲渡所得税 相続開始の後に売却するのであれば、相続税評価額(路線価や倍率評価)で相続税を計算し、譲渡所得税は、被相続人の取得価額と売却価額をもとに計算します。相続税と譲渡所得税が課税されますが、相続税は遺産の取得に対して課税されるのに対し、譲渡所得税は、被相続人の取得時から蓄積されたキャピタルゲインの実現に対する課税ですので、それぞれ異なり、二重課税とは考えられていません。 また、譲渡所得の計算では、先に課税された相続税のうち、土地の価額に対応する部分は、取得費に加算され、その分、譲渡所得税の負担は少なくなります。 なお、相続開始前に、土地の売買契約が締結されていたときは、売却価額で相続税が課されることがあるので注意しましょう。 ◆分割協議が未了のときは 申告期限までに遺産分割協議が調ったときは、相続税も譲渡所得税も遺産分割の割合で按分しますが、分割協議が調わないときは、どちらも法定相続分で計算されます。 相続税の申告期限後に遺産分割協議が調った場合は、修正申告または更正の請求により相続人の間で相続税の負担を精算することができます。しかし、譲渡所得税については、申告期限後に分割協議が調ったとしても遺産分割の割合で修正申告や更正の請求をすることはできず、法定相続分での申告のままとなります。税務署からすれば一度、納税が行われているので申告期限後の分割の変更は、相続人の間で精算してくださいという考え方のようです。 ◆隠れた債務が見つかったときは 相続は実家の土地・建物だけと思っていたら、実は、親が生前、親族から金銭の支援を受けていたことがわかることがあります。このようなときは、親族間の争いでもある場合を除き、売却代金の一部を債務の返済に充当することになります。親族から親が金銭支援を受けた当時の事情を聞いて納得できる場合、これまでの親族の支援に感謝して親の債務を引き継ぎ、債権債務関係を清算することで相続手続きは終わります。

《コラム》公益通報者保護法の改正~役員も対象になります~

◆公益通報者保護とは 公益通報者保護とは、「公益のために通報を行った労働者を保護するためのツール」とされています(消費者庁HP)。 従来、「リコール隠し」や「産地偽装」「事故の隠ぺい」などの会社の不祥事について、労働者から行政機関などへ通報(内部告発)が多くなされてきました。 公益通報を行った労働者が保護されないと、公益通報をしたことによる不当解雇などの不利益を被る可能性がありますので、労働者が安心して公益通報をしやすくするための法律が「公益通報者保護法」です。 ◆「公益通報者保護法」の改正 「公益通報者保護法」は2006年に施行され、施行後5年を目途に見直しするとされていましたが、今年6月から改正法が施行されることとなりました。以下の3点が改正の目的とされています。①事業者自らが不正を是正しやすく、安心して通報が行われやすくする。②行政機関等への通報を行いやすくする。③通報者がより保護されやすくする。 ①については、窓口の設定、調査是正措置などの体制整備の義務づけ(300人以下の中小事業者は努力義務)、助言指導・勧告・公表などの行政措置の導入、通報者特定情報の守秘の義務化などが行われます。 ②については、行政機関や報道機関等への通報の条件が拡大されます。 ③については、通報に伴う損害賠償責任の免除が追加され、保護対象の通報は刑事罰だけでなく、行政罰も加わりました。 ◆役員も公益通報者保護の対象に 公益通報者の範囲が拡大され、労働者だけでなく、退職後1年以内の退職者、役員(自ら調査是正措置に努めたことが前提)も新たに対象となりました。 役員に公益通報を行ったことによる解任などの不利益が生じた場合、当該役員は会社に対して損害賠償請求が可能となります。 会社としては、労働者以外に公益通報者保護の対象が拡大することを前提に準備と対応が求められます。

《コラム》赤字でも納税の消費税は予納ダイレクト利用で先払いを!?

◆消費税は滞納の多い税目 消費税は滞納の多い税金です。令和3年8月に国税庁から発表された令和2年度の滞納状況でも、新規発生滞納額が全税目の半分以上を占めていました。 消費税は、商品や役務提供の対価の一部であり、売上時には、本体部分である売上(損益項目)と預かり部分である仮受消費税(負債)を分けて会計計上します。仕入や経費発生時には、本体部分である仕入・経費(損益項目)と前払い部分である仮払消費税(資産)に分けて計上します。税金計算では、原則として、仮受消費税と仮払消費税との差額が納付すべき税額として計算されます。この差額部分の現金的裏付け(=納税資金として確保しておくこと)がなく、受け取った仮受消費税部分も事業資金に投入されてしまっていると納税時に腐心することとなります。 ◆ダイレクト納付を利用した予納のススメ 事業を継続していると、前年度基準から、ある程度今年度の消費税の納付予想額も見えて来るはずです。この分を事業用資金とは別の口座(=納税準備預金など)に寄せておければ安心です。しかしながら、実際には手元にあるお金ですから、事業資金がひっ迫するとどうしても手を付けてしまいがちです。これに対抗するには解約できない外部に預けてしまうしかありません。 そこで活用できそうな制度が、ダイレクト納付を利用した予納です。これは、毎月の均等額納付も可能ですし、または、収入に応じた任意のタイミングで納付することも可能です。自社の事業が季節的な売上の増減がある場合には、年間で一番お金の入ってきたタイミングで、中間申告に関係なく、納付できます。消費税納税で苦慮した経験がある場合には、一度ご検討ください。 ◆ダイレクト納付のメリット ダイレクト納付は、事前に振替納税される口座を登録しておき、即時もしくは指定日に税金が振替納税される手続です。 電子申告等の後、簡単な操作で納付手続が完了します。また、税理士が納税者に代わって納付手続を行うことも可能です。自社でインターネットバンキングの契約がない場合にも使えます。源泉所得税等の毎月の納付手続など、特に利用回数の多い手続に便利だとされています。 不便なら使うのを止めればよいだけです。継続性は求められていませんのでお試しして損はありません。

《コラム》消費税の中間申告~新年度に確認すべきことと失念対策~

◆消費税の中間申告と納税 事業者は、前課税期間(個人の場合は前年、法人の場合は前事業年度)の消費税の年税額(地方消費税額は含みません)が一定額を超える場合、消費税の中間申告と納税をしなければなりません。中間申告の回数は、直税課税期間の年税額に応じ、48万円超は年1回、400万円超は年3回、4,800万円超は年11回です。 前課税期間の確定申告が終わった時点で、新年度の中間申告の回数と申告納付の時期が確定します。前課税期間の消費税が増え、中間申告すべき回数が増える場合には、申告納付を失念しないよう留意が必要です。法人税の中間申告は前期の税額にかかわらず年1回です。中間申告は6か月経過後から2か月以内という固定観念をお持ちの場合、特に注意が必要です。 ◆前期間基準の場合申告なしでも納税額確定 中間申告の方法は、前期間基準による申告と仮決算に基づく2つの方法があります。中間申告期限までに申告書の提出がなかった場合には、前課税期間基準による申告書の提出があったものとみなされる特例が設けられています。そのため、申告書の提出を失念した場合、前課税期間基準による納税額が確定しています。納付が遅れると、期限後納付として延滞金等が発生します。 ◆電子申告なら「お知らせ」メッセージ有 国税庁では、e-Taxで法人税申告書を提出した法人に対し、行政経費の削減に努めるため、法人税の予定申告書用紙を送付しないこととしています。消費税は、当面、中間申告書用紙が送付されることとなっています。が、法人の電子申告利用率が法人税および消費税とも令和2年度で85%(令和3年10月発表)を超えたことを鑑みると、そのうち廃止されるものと思われます。 中間申告が必要であるという概念が抜け落ちているときに届いた税務署からの郵送物は、開封されぬまま放置されたりゴミ箱行きとなってしまっていたりのケースもありました。前年分の申告を電子申告で行っていれば、中間申告対象期間の翌月の初日には、「消費税中間申告書提出についてのお知らせ」がe-Taxのメッセージボックスに格納されます。そして、e-Taxの利用者登録情報に、会社担当者のメールアドレスと会計事務所のメールアドレスを登録しておくと、e-Taxメッセージが格納されたことが通知されます。会社と会計事務所のダブル体制でうっかり失念の回避対策が図れます。

《コラム》印紙税の豆知識

◆売上の領収書でも印紙税がかかりません 営業目的の売上の5万円以上の「領収書」には、その記載された金額により印紙税がかかります。それは印紙税法の第 17 号文書「金銭又は有価証券(小切手・手形等)の受取書」に該当するためです。 しかし、17号文書の「課税物件」欄の文言をよく読むと、「金銭又は有価証券の受取書」となっております。今はやりの電子決済やクレジットカード取引等の信用取引では現実に金銭や有価証券の授受を伴いませんから、売上にかかる「領収書」でも印紙税はかかりません。ただし領収書に「○○電子決済」や「クレジットカード決済」等と明記しておく必要があります。 電子決済といっても事前に入金しているような前払支払方式や即時決済等、信用取引ではない場合は金銭の授受と見なされ、「領収書」は17号文書となり印紙税がかかります。 ◆5万円に消費税は含まれるの? 5万円以上の領収書には、記載された金額により印紙税がかかることは周知の通りです。最高で20万円(10億円を超える金額)の印紙税がかかりますが、消費税が含まれるのかどうかで10%の差が出ます。 例えば46,000 円の商品を販売すると消費税が4,600円かかります。お客様から50,600 円を頂戴して「領収書」を発行するときに、単に合計で品代50,600 円とだけの記載ですと印紙税はかかります。しかし「消費税の金額が区分記載されている場合は、消費税の金額は、記載された受取金額に含めない」という税法の規定がありますので、次の①又は②のように記載すれば印紙税はかかりません。①商品代金46,000円 消費税及び地方消費税4,600円  合計50,600円②商品代金50,600円 うち消費税及び地方消費税4,600円

《コラム》領収書と印紙税

◆領収書と領収証 「領収書」と「領収証」はどちらも「民法上の受取証書=現金・商品を受け取った事実を証明する書類」という同じ意味合いを持つ言葉ですが、一般的な市販品では「領収証」という記載が多くなっています。ただ印紙税法では、「領収書」を領収証・レシート・受領書等の総称として使っている感があります。本文でも以下総称として「領収書」といたします。 ◆領収書と印紙税 領収書は、印紙税法の印紙税額一覧表の第17号文書「金銭または有価証券の受取書」に該当し、印紙税が課税されます。受取書とはその受領事実を証明するために作成し、その支払者に交付する証拠証書をいいます。したがって、「受取書」、「領収証」、「レシート」、「預り書」はもちろんのこと、受取事実を証明するために請求書や納品書などに「代済」、「相済」とか「了」などと記入したものや、お買上票などでその作成の目的が金銭または有価証券の受取事実を証明するものであるときは、金銭または有価証券の受取書に該当します。この17号文書に該当した場合は、記載された金額により印紙税がかかります。10億円を超える金額では20万円の印紙税がかかります。 ◆売上代金以外の領収書 売上代金として受領した「領収書」は前述の通り、その記載された金額により印紙税がかかりますが、売上代金以外の「領収書」は5万円未満のものは非課税で5万円以上のものは200円の印紙税という区分だけです。売上代金以外での金銭等の「領収書」としては、借入金の受領書や担保として差し入れた保証金の受領書等があります。 ◆営業目的以外の領収書 営業とは営利を目的として行われる行為ですから、営利を目的としない公益法人や自治体や商売をしていない個人などが金銭等の受領の証として「領収書」を発行しても印紙税はかかりません。