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【時事解説】中小企業における金融機関への期待 その2

 では、感染症流行による事業環境の変化を踏まえて、金融機関は具体的にどのような支援を行っているのでしょうか。そこで中小企業白書2021年版において、感染症流行下の取引先企業の経営課題に迅速に対応した金融機関の事例として紹介された飯田信用金庫の取組みについてみていきましょう。

 長野県飯田市に本店を置く飯田信用金庫は、事業者に対する感染症流行を踏まえた支援策として、2020年3月と8月に計2回の大規模なヒアリングを行い、速やかに資金繰り支援を実施しました。各支店が収集する取引先の課題などの情報はイントラネット上で集約し、役職員間で情報を共有しています。その中で、休業中の老舗高級旅館の女将からの「従業員の仕事に対するモチベーションを維持できるか心配」という声と、さくらんぼ観光農園からの「観光客が来なくなったため、このままでは自力で収穫して出荷しようにも人手がなく収穫できない」という声を受け、同信金本部が両者の声を結び付け、旅館従業員と観光農園の収穫作業のマッチングに乗り出しました。

 そこで地元の観光まちづくりセンターとも連携し、6軒の農家に旅館の従業員を交代で派遣することになりました。旅館の従業員は農家の指導の下、さくらんぼの収穫を手伝うなど農作業に従事し、各農家が無事にさくらんぼを出荷することができました。

 その後、同旅館は2020年7月に営業を再開し、従業員は、派遣先農家のさくらんぼで作ったウェルカムドリンクを宿泊客に提供するなど農家とのつながりはその後のサービスの拡充にも生かされています。

 このように感染症流行を受けて、金融機関が業種をまたいだビジネスマッチングなどの支援を行っているのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)