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【時事解説】イノベーションは心理的安全性の高い職場から生まれる その1

 最近、経営学の分野では「心理的安全性」が話題になっています。これは、「自分が問題提起や異論を唱えても、仲間やリーダーがしっかり受け止めてくれる」「このチームでは何を言っても安全」と思える関係性を指します。ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念です。

 職場によっては、担当者がアイデアを提言すると上司がけんもほろろに切り返したり、無視したり、あるいは仲間が嘲笑するような環境もあります。このような職場は心理的安全性が低いとされています。

 心理的安全性が注目されるきっかけは、グーグルが独自で実施した調査にあります。一般的に、企業の中には活気のある職場もあれば、沈滞している職場もあります。グーグルは活気のある職場は生産性が高く、イノベーションの創出数が多いというデータを示した上で、その違いは何が要因なのか、約200もの職場を対象に測定しました。結果、自由にものが言え、組織に認められ、安心感を覚えることができる職場のほうが、生産性が高くイノベーションを生みやすいという結果が出たといいます。心理的安全性は企業の業績を左右する一要因ともいえます。

 ただ、注意が必要なのは「心理的安全性」は望みを何でも聞いてくれるゆるい職場とは異なります。「仕事をしたくない」といった要望を上司が叶えてくれるということでもありません。むしろ、自由な発想が許される分、求められる仕事の内容や水準も高いのが特徴です。メンバーそれぞれが相手の意見を尊重するということは、建設的な意見を交わし、そこから一段上の発想を生みだすことを意味します。これはラクなことではありません。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)