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【時事解説】イノベーションは心理的安全性の高い職場から生まれる その2

 最近、経営学の分野では「心理的安全性」が話題になっています。「このチームでは何を言っても上司や仲間が受け止めてくれる」といった安心感のある職場のほうが、生産性が高く、イノベーションが生まれやすいというものです。

 また、心理的安全性はイノベーションなどの正の効果だけでなく、不正の防止といった負を減少させる効果もあるといいます。職場によっては、反対意見を述べる人は、「ネガティブな人」「面倒くさい人」などと敬遠されるケースもあります。このような心理的安全性の低い職場では、たとえ仲間の行動が不正ではないかと思っても、「ダメな人の烙印を押されたくない」「言っても無駄」という意識が働き、二の足を踏んでしまいます。反対に、心理的安全性が高い職場ならば、きちんと自身の意見を声に出し、これが結果として不正防止につながります。

 不正が起こるパターンはいくつもありますが、不正を起こす本人は不正をしている自覚がない時もあります。業界の商習慣や上司の命令など、本人はおかしいと薄々感じつつも、常識だから……、上司の命令だから……など、思考停止に陥り不正を行ってしまうパターンがそうです。このような場合、心理的安全性の高い職場ならば、第三者が言葉をかける機会が増えます。結果、本人や上司が思考停止から抜け出し、自身の行いを省みることができます。

 ある企業では「アサーション(主張)」という制度を導入しています。これは、役職に関わらず、新人でも誰でも気付いたことを「アサーション」として上長に伝える取り組みです。指摘された側は「アサーションをありがとう」とまずは感謝を伝えることをルールとして決めています。そうすることで、部員が気軽に臆せず発言でき、心理的安全性が高まります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)