Column

【時事解説】健康寿命とともに注目度が増すフレイルとは? その2

 近年、長生きするだけでなく健康で幸せに生きる健康寿命が重視されるようになりました。そこで、注目を集めているのがフレイルへの対処です。フレイルとは加齢による心身の虚弱を指します。具体的な症状を挙げると、物覚えが悪くなった、耳が遠くなった、足腰が弱るといったことが該当します。 とくに、コロナ禍で外出を控える高齢者が増え、足腰が衰え、結果、フレイル該当者が増加しているという調査結果もあります。  ただ、フレイルは早期に発見し対処すれば、もとの状態に戻れるともいいます。こうした流れを受けて、自治体の中には、フレイルが疑われる高齢者を対象に運動メニューを提供する取り組みを行っているところもあります。また、大学の中には、体操教室を開き、高齢者が音楽に合わせて学生と一緒に体を動かすといった取り組みを実施したところもあります。  近い将来、医療の発展によりフレイルに対処する薬や体操をはじめ、さまざまな治療方法が確立されることが予想されます。結果、フレイルを5~10年程度、延ばせるときが訪れるともいわれています。そのとき、全ての対処法が安価に受けることができればよいのですが、最初は健康保険の適用外が多くを占めるでしょう。すると、医療の恩恵を受けられる人とそうでない人の間に格差が生じることになります。お金がある人はフレイルに関する医療や薬、サービスをふんだんに受け、老化を先延ばしすることができる一方で、貧しい人は従来通り老化することになります。  社会としては、こうした格差をどこまで受け入れるのか、格差を最小限にとどめるにはどのような体制が必要か、今後議論が必要になるときがくると予想されます。(了) (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】健康寿命とともに注目度が増すフレイルとは? その1

 近年、糖尿病や動脈硬化などの成人病に対しては、医学の発展により解決方法がみえつつあります。癌も同様、以前よりも治療で治せるようになりました。不治の病の克服もあり平均寿命は伸びました。厚生労働省によると、2020年の日本人の平均寿命は女性が87.74歳、男性は81.64歳です。2010年の女性86.39歳、男性79.64歳と比べると、女性は1.35歳、男性は2歳ほど伸びています。今後も平均寿命は延伸すると見込まれており、2060年には女性の平均寿命は90歳を超えるともいわれています。  寿命が延びる中、長生きするだけではなく、健康で幸せに生きることが重要だという考えが強まり健康寿命が重視されるようになりました。その中、「フレイル」にも注目が集まるようになりました。  フレイルというのは、加齢で心身が虚弱状態に陥ることを指します。介護が必要なほどではなく、介護のひとつ手前の状態ともいえます。具体的には、物覚えが悪くなった、長時間歩き続けられない、長い時間立ち仕事をすると膝が痛む、さらには、耳は聞こえるがテレビの音が聞こえづらいといった症状が該当します。  フレイルは放置すると要介護状態に進むものもありますが、早期発見し適切な介入支援を行えば健康の状態に戻るものもあります。いち早く、フレイル状態を検知することに大きな意義があります。こうした特性から、最近ではフレイル専門のドックが誕生しています。  また、自治体によっては、高齢者の聴力低下に対する早期発見に力を入れているところもあります。ある自治体では無料で聴力検査を実施して、聴力低下がみられる高齢者には耳鼻科の受診や補聴器の使用などを促し、フレイルのリスクを低減しようとしています。(つづく) (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》青色専従者給与の適正額は?

 事業所得、不動産所得等の計算に当たり、必要経費に算入される青色専従者給与の額は、親族以外の第三者に同じ仕事をしてもらう場合に支払ってもよいと考えられる金額を想定して決めると良いかもしれません。 ◆青色専従者給与の経費算入 生計一の配偶者や親族が事業から支払を受ける対価は、原則として必要経費に算入されません。しかし、青色申告を行う個人事業者には適切な帳簿記帳を行う見返りとして、事業に従事する生計一の配偶者や親族に支払う給与を一定の条件のもと、必要経費に算入する特例が認められています。 ただし、生計を一にする配偶者や親族に支払う給与は、家計からの資金流出を実質的に防ぎ、さらに必要経費に算入して税負担を圧縮することが可能となるため、この制度の利用には制限が付されています。 ◆青色専従者給与の認定要件 青色専従者給与として経費に算入できる要件は、以下のものです。①事業者と生計を一にする配偶者その他の親族に支払われるものであること(支払を受ける側は、給与所得として課税)。②12月末現在で15歳以上であること。③その年を通じて6月超(一定の場合は従事可能期間の2分の1超)、その事業に専ら従事すること。④「青色事業専従者給与に関する届出書」を算入しようとする年の3月15日までに所轄税務署長に提出すること。⑤労務の対価として相当であると認められる金額であること。 ◆課税上の扱い 課税上は、同じ職場の使用人給与の額や類似業種の専従者給与の額と比較して適正な水準かが問われます。判例には税理士の妻や歯科医の妻(歯科衛生士)に支払われた給与について、同業者の青色専従者給与の平均額と比較し、高額と認められた部分の経費算入を認めなかったものがあります。 アパート経営においても不動産会社と管理契約を締結している場合、オーナーの業務はほとんど発生しないため、配偶者や親族を青色専従者にするときは業務内容から給与設定する慎重さが必要となるでしょう。 なお、事業としては認められない程度の事業規模の場合や、配偶者や親族が他の仕事にも従事して年に6月超、事業に従事できない場合には、青色専従者給与そのものが認められなくなるので注意しましょう。

《コラム》税金よもやま話 自動車にかかる税金の種類

◆自動車にはさまざまな税金がかかる 居所によってはなくてはならない移動手段の自動車ですが、この自動車にはさまざまな税金がかかります。ガソリン代等にも税金はかかっていますが、今回は車体にかかる税金を詳しく見てみましょう。 ◆購入段階で2種類の税金 皆さんになじみの深い「消費税」は、自動車の購入時にもちろんかかってきます。それとは別に「環境性能割」という税金がかかる場合があります。燃費性能に応じて取得価格の0~3%(軽自動車の場合0~2%)が課せられます。 この環境性能割は2021年12月31日までは消費増税後の負担を解消するために、燃費性能の低い自動車に対する税率の軽減措置がありましたが、今年から撤廃されています。環境性能割込みで考えると、今年からは値段が少し高くなっている自動車もあるということです。 昔あった「自動車取得税」は、消費税が10%になった2019年10月に廃止されています。環境性能割はこの代替という意味合いもあります。 ◆排気量にかかる自動車税 自動車税(軽自動車税)は毎年4月1日時点での自動車の所有者に課せられます。この自動車税は自動車の排気量によって税額が定められています。2019年税制改正で、税額が軽減されましたが、2019年9月30日前に新規登録した自動車については旧来の税額が適用されています。 自動車税(軽自動車税は除く)は月割りのため、年の途中で廃車等を行った場合は還付が受けられます。 ◆重さにかかる自動車重量税 自動車重量税はその名の通り、自動車の重さによって課される税金です。2年に1度の車検の時に有効期間分を前払いします。この自動車重量税は、燃費基準に応じて税額が免税もしくは安くなり、新車登録から13年・18年を経過する場合、税額が高くなる特徴があります。 自動車重量税については2022年税制改正で、キャッシュレス納付制度が創設され、2023年1月からはクレジットカードでも納付が可能になる予定です。

【時事解説】中小企業におけるIT人材の確保と育成 その2

 では、中小企業ではIT人材の確保と育成が具体的にどのように行われているのでしょうか。そこで『中小企業白書2021年版』において、IT人材の確保によりIoT事業の開発体制を構築し新規事業への参入を実現した企業の事例として取り上げられた、株式会社木幡計器製作所(大阪府)の取組みについてみていきましょう。  株式会社木幡計器製作所は、1909 年創業の圧力計専業メーカーです。同社社長は、管理コストを抑えつつ安全性の確保を実現したいユーザー企業側の潜在的なニーズを発見し、IoTシステムで管理することで、これまで独立していた工業計器のネットワーク化と遠隔での保全管理が可能になると考えました。しかし、IoT関連製品の新規事業開発に向けて、IT人材の確保が課題となりました。  そこで同社は、大手電機メーカーから早期退職した電子回路のベテラン設計者2名を採用、翌年には更に2名、大手企業出身の専門人材も加わりました。大手企業と同社では企業文化が異なることから、一体感を高めるきっかけとして朝礼後の清掃において従業員をチームに分けて、社員間で意見交換する機会を作りました。また、IoT関連の展示会に出展する際に、中途採用メンバーとプロパー社員が一緒に準備を進めることで、プロパー社員の知識が増えていきました。 試作開発や従来製品の不具合の場面でもプロパー社員と中途採用メンバーが協力することで距離が縮まり、社内にIoT製品開発に向けた土壌が醸成されていきました。こうして「後付けIoTセンサ・無線通信ユニット」を開発するに至り、同社の主力製品の一つにまで成長していきました。  このようにIT人材を確保した場合には、既存社員との融合がカギとなるのです。(了) (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業におけるIT人材の確保と育成 その1

 感染症流行などの要因に伴い中小企業におけるデジタル化の推進が求められる中、ITツールの活用や情報システムの導入を企画、推進、運用するIT人材の確保と育成が求められます。以下で、中小企業庁編『中小企業白書2021年版』において実施されたアンケート調査に基づき、中小企業におけるIT人材の確保・育成の現状と課題についてみていきましょう。  IT人材の確保状況をIT人材のタイプ別にみると、「確保できていない」と回答した企業の割合は、デジタル化の取組み全体を統括できる人材で55.2%、ITツール・システムを企画・導入・開発できる人材で57.0%、ITツール・システムを保守・運用できる人材で46.6%となっており、多くの中小企業がIT人材を確保できていないことがわかります。  IT人材の確保における課題を回答割合の高い順にみると、「IT人材を採用・育成する体制が整っていない(57.1%)」、「IT人材に向けた魅力的な処遇を設定できない(30.6%)」、「人材難によりIT人材を採用できない(25.8%)」となっており、とくにIT人材を採用・育成するための体制面での課題を抱えていることがわかります。  IT人材の確保方法及び育成方法についてみると、確保方法については、「既存社員の育成」と回答した割合がIT人材のタイプに関わらず最も高くなっています。また、育成方法については、「基本的に社員の主体性に任せている」と回答した割合がIT人材のタイプに関わらず最も高くなっており、体系的な育成制度が十分に整っていないことが推察されます。  このように多くの中小企業がIT人材を確保できていないことに加え、IT人材を育成する体制が整えられていない状況にあるのです。(つづく) (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》令和4年度の雇用保険料率2段階引き上げ

◆2段階で引き上げ改定される雇用保険料 新型コロナの影響が続く中、おととしの2月からこれまでの雇用調整助成金等の支給額は5兆円を超えていて雇用保険の財源不足が課題となっています。厚労省の審議会で議論されてきましたが、雇用保険料改定が決まりました。それによると労使折半で賃金の0.2%を負担している失業給付などを支払う事業の保険料率は4月から半年据え置き、10月から3月まで0.6%上げるとしています。一般の事業では労使で4月~9月1000分の9.5、10月~3月は1000分の13.5となります。4月の時点では労働者の給与から控除される保険料は変更ありません。 ◆改定の内訳と流れ 雇用保険料は労使が負担する雇用保険料や国庫負担などで賄われています。雇用保険料の中身は失業給付(労使折半)、育児休業給付(労使折半)、雇用二事業(事業主負担、助成金や教育訓練に充てる)で構成されています。 今までは積立金が一定水準を超えていたことで労働者0.3%、事業主0.6%と原則より低い負担で抑えられてきましたがコロナ禍で積立金が枯渇してきています。 令和4年度の失業負担分は4月には据え置かれますが10月には0.6になります。また、育児休業給付に係る保険料率は年間通し0.4%のまま据え置かれます。 一方、事業主のみが負担する「雇用保険二事業」の料率は4月から0.3%から0.35%に上がります。その結果事業主負担は全体で0.65%になります。 ◆料率改定事務 変更分はいつから 今のところの予想ですが、令和4年度の労働保険概算確定申告時に令和4年度の概算額として事業主負担の二事業の引き上げ分を乗せます。また、10月からの料率改定の分は10月以降の概算賃金額に引き上げられる新料率をかけて保険料の概算額を出し、前半分と後半分を足して1年間の概算額とします。詳しくは令和4年度の労働保険料の計算方法が発表されてから確認することとなります。 各労働者の給与からの雇用保険料率の徴収額が上がるのは令和4年10月分給与からです。

《コラム》NISAの現状とおさらい

◆NISAは浸透したのか NISAとは、株式・投資信託等の配当・譲渡益等が非課税対象となる個人投資家のための税制優遇制度です。3種類あり、金融庁発表の2021年6月末の各制度の利用状況は、(一般の)NISA:約1237万口座 つみたてNISA:約417万口座 ジュニアNISA:約57万口座となっています。 まだつみたてNISAがなかった制度開始時の2014年3月末時点のデータでは、NISA総口座数は492万となっているため、7年間で約3.5倍の利用口座増となっています。 「家計の安定的な資産形成の支援」と「成長資金の供給」を目的としたNISA制度は、徐々に定着してきているようです。 ◆NISAの特徴をおさらい NISAの特徴は1.投資で得た利益が非課税になる2.毎年の購入上限枠がある(一般120万円、つみたて40万円)3.非課税期間は一般5年間、つみたて20年間というところです。通常株式等の売却益が出た場合、所得税や住民税がかかりますが、NISAで出た利益に関しては非課税となるのでお得です。一方、損が出てしまった場合は、他の口座との損益通算や損失の繰越しができないデメリットも存在します。 ◆非課税期間が終わる際の選択肢 一般のNISA口座の場合、非課税期間5年が終了した場合、以下の選択が可能です。1.非課税期間終了までに売却2.翌年の非課税投資枠に移管3.他の課税される口座に移管 非課税期間終了までに売却すればその利益は非課税です。翌年の投資枠に移管する場合の上限がないため、前述した「購入上限枠」を超えての持ち越しが可能ですが、その年の新規投資枠は0円ということになります。他の課税される口座に移管した場合は、その移管時の価格が取得価格となるため、非課税期間に値上がりした価格差はきちんと非課税扱いとなります。 なお、2024年1月から、新NISA制度が始まりますが、現状のNISAを行っている方は一部銘柄を除き「翌年の非課税投資枠に移管」が継続して行えます。

【時事解説】イノベーションは心理的安全性の高い職場から生まれる その2

 最近、経営学の分野では「心理的安全性」が話題になっています。「このチームでは何を言っても上司や仲間が受け止めてくれる」といった安心感のある職場のほうが、生産性が高く、イノベーションが生まれやすいというものです。  また、心理的安全性はイノベーションなどの正の効果だけでなく、不正の防止といった負を減少させる効果もあるといいます。職場によっては、反対意見を述べる人は、「ネガティブな人」「面倒くさい人」などと敬遠されるケースもあります。このような心理的安全性の低い職場では、たとえ仲間の行動が不正ではないかと思っても、「ダメな人の烙印を押されたくない」「言っても無駄」という意識が働き、二の足を踏んでしまいます。反対に、心理的安全性が高い職場ならば、きちんと自身の意見を声に出し、これが結果として不正防止につながります。  不正が起こるパターンはいくつもありますが、不正を起こす本人は不正をしている自覚がない時もあります。業界の商習慣や上司の命令など、本人はおかしいと薄々感じつつも、常識だから……、上司の命令だから……など、思考停止に陥り不正を行ってしまうパターンがそうです。このような場合、心理的安全性の高い職場ならば、第三者が言葉をかける機会が増えます。結果、本人や上司が思考停止から抜け出し、自身の行いを省みることができます。  ある企業では「アサーション(主張)」という制度を導入しています。これは、役職に関わらず、新人でも誰でも気付いたことを「アサーション」として上長に伝える取り組みです。指摘された側は「アサーションをありがとう」とまずは感謝を伝えることをルールとして決めています。そうすることで、部員が気軽に臆せず発言でき、心理的安全性が高まります。(了) (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】イノベーションは心理的安全性の高い職場から生まれる その1

 最近、経営学の分野では「心理的安全性」が話題になっています。これは、「自分が問題提起や異論を唱えても、仲間やリーダーがしっかり受け止めてくれる」「このチームでは何を言っても安全」と思える関係性を指します。ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念です。  職場によっては、担当者がアイデアを提言すると上司がけんもほろろに切り返したり、無視したり、あるいは仲間が嘲笑するような環境もあります。このような職場は心理的安全性が低いとされています。  心理的安全性が注目されるきっかけは、グーグルが独自で実施した調査にあります。一般的に、企業の中には活気のある職場もあれば、沈滞している職場もあります。グーグルは活気のある職場は生産性が高く、イノベーションの創出数が多いというデータを示した上で、その違いは何が要因なのか、約200もの職場を対象に測定しました。結果、自由にものが言え、組織に認められ、安心感を覚えることができる職場のほうが、生産性が高くイノベーションを生みやすいという結果が出たといいます。心理的安全性は企業の業績を左右する一要因ともいえます。  ただ、注意が必要なのは「心理的安全性」は望みを何でも聞いてくれるゆるい職場とは異なります。「仕事をしたくない」といった要望を上司が叶えてくれるということでもありません。むしろ、自由な発想が許される分、求められる仕事の内容や水準も高いのが特徴です。メンバーそれぞれが相手の意見を尊重するということは、建設的な意見を交わし、そこから一段上の発想を生みだすことを意味します。これはラクなことではありません。(つづく) (記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)